多様な教育機会確保法案と第2期教育振興基本計画──学びのセーフティネットの構築

2006年の教育基本法の改正によって、政府は「教育振興基本計画」を定めることになりました。文部科学白書によると、教育振興基本計画とは、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針や講ずべき施策、その他必要な事項について、政府が定める基本的な計画のことです。2013年6月14日付けで閣議決定された「第2期教育振興基本計画」(平成25年度から平成29年度までの5年間)には、4つの基本的方向性の一つとして、「学びのセーフティネットの構築──誰もがアクセスできる多様な学習機会を」がうたわれています。その記述を読むと、多様な教育機会確保法案の根拠の一つは、この第2期教育振興基本計画にあるように思えます。

また、この「学びのセーフティネットの構築」の成果指標には、「⑤いじめ,不登校,高校中退者の状況改善(いじめの認知件数に占める,いじめの解消しているものの割合の増加,全児童生徒数に占める不登校児童生徒数の割合の減少,高校中退者数の割合の減少など)」(60頁)が挙げられています。多様な教育機会確保法案は、とても急いで成立を目指している印象がありました。第2期教育振興基本計画の最終年度は平成29(2017)年度です。不登校児童生徒数の減少という成果を示すには、そこから逆算して、遅くとも2017年4月には法律を施行したいという思惑があったのかもしれません。ちなみに、2015年9月15日に示された多様な教育機会確保法案の附則第1条第2号には、個別学習計画の手続を定めた法案第4章の施行日が「2017年4月1日」と記されています。



第2期教育振興基本計画:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/detail/1336379.htm

第2期教育振興基本計画の概要は『文部科学白書2012』の「特集1教育再生の実行に向けて」の9-20頁に詳しい
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab201301/1338525.htm




以下、第2期教育振興基本計画からの抜粋===============

「(3)学びのセーフティネットの構築~誰もがアクセスできる多様な学習機会を~
(中略)
(様々な困難を抱える人へのきめ細かな対応)
○ 例えば,東日本大震災の被災地における学習支援の必要性はもとより,我が国全体においても,経済雇用環境の悪化などの環境変化により,生活困窮者や不登校等の状態にある児童生徒,再チャレンジを必要とする中途退学者,フリーター,若年無業者など失業状態にある人々,スキルアップを目指す社会人,退職後に生きがいを失っている高齢者など様々な悩みや課題を抱える人たちが増加している。このような多様なニーズに応じた学習機会の確保と教育成果を保証するきめ細かな取組を推進することが求められている。」(22頁)


「2-3 生徒指導体制及び教育相談体制の整備・充実
・小・中・高等学校の継続性を保ちつつ,関係機関等と連携を図りながら,全校体制で一人一人の児童生徒の健全な成長,自ら現在及び将来における自己実現を図っていく自己指導能力の伸長を目指した各学校における教育活動を促進する。
・教育相談を必要とする全ての小・中学生が適切な教育相談等を受けることができるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の外部専門家の活用など教育相談体制の整備を支援するとともに,各学校や市町村等における不登校の子ども等の教育機会の確保や児童生徒の自殺防止に向けた取組を支援する。」(39頁)


「6-4 海外で学ぶ子どもや帰国児童生徒,外国人の子どもに対する教育の充実
・海外で学ぶ子どもたちの教育環境の整備・充実を図るため,在外教育施設に対して,引き続き質の高い教員の派遣や教材整備等を行う。また,帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな指導・支援体制を整備するため,個々の実態を踏まえた日本語指導の在り方の検討,教員や支援員の確保及びその資質の向上等に取り組む。このほか,高等学校における受入れ状況を把握し,編入学機会の拡大を図る。さらに,不登校・不就学の定住外国人の子どもに対して日本語等の指導や学習習慣の確保を図るための場を外国人集住都市等に設け,主に公立学校への円滑な転入ができるようにする。」(44頁)


「3.学びのセーフティネットの構築
成果目標6(意欲ある全ての者への学習機会の確保)
様々な困難や課題を抱え支援を求めている者に対して,生涯を通じて多様な学習機会を確保する。また,能力と意欲を有する全ての者が中等・高等教育を受けられるようにする。
これを通じて,経済的,時間的,地理的制約等による教育格差を改善する。
【成果指標】
<主として初等中等教育関係>
(中略)
⑤いじめ,不登校,高校中退者の状況改善(いじめの認知件数に占める,いじめの解消しているものの割合の増加,全児童生徒数に占める不登校児童生徒数の割合の減少,高校中退者数の割合の減少など)」(60頁)


「18-2 「貧困の連鎖」防止等に向けた多様な主体と連携した学習支援等
・高校中退者情報の共有を推進するとともに,在学生に対する支援を充実するなど,学校とハローワーク・地域若者サポートステーションとの連携体制を構築する。また,関係行政機関,NPO等が連携して行う,①児童生徒に対する学習支援や高校中退者等に対する学び直しの機会の提供,②課題を抱える家庭に対する家庭教育支援,③地域の公民館,図書館等を活用した若者の自立・社会参画支援などの取組を推進する。
・高等学校の定時制課程・通信制課程におけるスクールカウンセラー等の専門家の配置や資格取得につながる職業科目の設定等の特色ある教育課程の編成・実施等の推進を通じて,中途退学や不登校の経験者,特別支援教育を必要とする生徒など課題を抱える生徒の社会的自立を促す。加えて,義務教育未修了の学齢超過者等に対して義務教育の機会を提供しているいわゆる中学校夜間学級に対する支援を引き続き行う。」(62頁)



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