多様な教育機会確保法(仮称)案への関係者の期待①──心理的負担の解消

2015年6月16日に開かれた「多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会」に参加して、フリースクール等の関係者が、この法案の成立に期待することは、(1)小中学校に行かないことによる心理的負担の解消、(2)制度がもたらす不利益の解消、(3)経済的負担の解消、の3点くらいにまとめられるのではないかと考えています。

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会に参加して
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_6.html

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会・記録(フリースクール全国ネットワーク)
http://freeschoolnetwork.jp/wptest/wp-content/uploads/2015/06/rewrite.pdf


例えば、院内集会で採択された「多様な教育機会確保法(仮称)の今国会での成立を期す要請文」には、ちょうど上記の3点(心理的負担、制度的不利益、経済的負担)が、現状の問題点として指摘されていたように思います。

「しかし、フリースクールは、学校外でしたから、公的支援がなく、親はかなりな経済的負担に苦しみ、また運営も楽ではありませんでした。その上就学義務の関係で、通わない学校に籍を置く二重籍問題も生じ、そのための混乱やあつれきは、家庭と学校相互の関係にも不信を生じさせ、子どもに罪悪感も持たせました。」(要請文1頁)

多様な教育機会確保法(仮称)の今国会での成立を期す要請文(NPO法人フリースクール全国ネットワーク)
http://freeschoolnetwork.jp/wptest/wp-content/uploads/2015/06/0616yousei.pdf



こうした「心理的負担」「制度的不利益」「経済的負担」の解消という3点のうち、今回は「心理的負担の解消」について、書こうと思います。



(1)小中学校に行かないことによる心理的負担

院内集会では、中学3年生で不登校になりフリースクールに通っている寺村恵理加さん(16歳)は、

「もし学校に行かない選択肢が認められていたのなら、自分を責めたり、周りの目を気にすることもなかったはずです。学校に行っていない子どもたちが、嫌な思いをせずに生活できることを願っています。」(NHKニュース、2015年6月17日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150617/k10010117111000.html

と述べていました。


この発言に表れているように、みんながごく普通に通っている小中学校に自分一人だけ行けなくなることは、子ども本人や保護者にとって大きな不安や引け目を生じさせます。そのため、人に会うのがおっくうになり、引きこもりがちな生活になります。自室に一人こもりながら、「この先、いったい、どうなるのだろうか」と自問自答を繰り返すことは、ともてつらいことです。

もちろん、こうした不安や引け目といった心理的負担は、もとの小中学校に再登校できればなくなります。

しかし、不登校になる前に、「学校には行きたくないが、それでも何とか無理して学校に通っている」という期間が継続しているのが通例です。なぜなら、「学校に行かなくても大丈夫だ」と考えている子どもは少数だからです。すでに無理な登校によって心身の疲れがたまっているので、いざ学校に行けなくなった時には、何もできないことも少なくありません。それは、うつ病のような状態に近いのかもしれません。

この疲労困憊の不登校初期の段階で、子どもに再登校を働きかけることは、かえって本人を追い詰めることになり、逆効果になりかねません。この時期は、子どもは何もかも忘れて休むしかほかになく、周りの人びとも子どもを暖かく見守りながら、その疲れが癒えることを待つしかありません。

ただ、そうこうしているうちに時間が過ぎ去っていき、学校に戻ることがしだいに難しくなっていくのです。もともと行きたくなかった学校に、長期間休んだ後に戻るのは、子どもにとって、たいへん勇気のいることです。


こうした事態を避ける一つの方法は、「行きたくない学校に無理に通うことを早めにやめて、行ける学校へ転校する」というものです。

これまでも、いじめや不登校などを理由に、公立学校間での転校は可能でした(学校教育法施行令第8条)。

就学指定校の変更(富山市)
http://www.city.toyama.toyama.jp/data/open/cnt/3/4150/1/230401.pdf


今回の「多様な教育機会確保法(仮称)」案は、市町村教育委員会の認定があれば、学校以外の民間のフリースクール等へ、いわば「転校」を可能にするものです。

今回の法案によって「転校」先が増えるならば、通える学校が見つけやすくなって、無理に学校に通い続けて身体を壊すということも減るのではないでしょうか。


また、「多様な教育機会確保法(仮称)」案は、義務教育を受けられる年齢の制限を取り払おうとしています。

このことは、不登校の子どもや周りの大人から焦りを取り去り、子どもにじっくり休んで考える時間をあたえることにもつながるように思います。






<高山龍太郎のブログより>

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「個別学習計画の支援・勧告・修了」と「就学義務の履行」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_6.html

多様な教育機会確保法の条文案(2015年8月11日付け未定稿)における「個別学習計画の認定と修正」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_5.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「基本指針」と「多様な教育機会の確保に関する施策」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_4.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「国と地方公共団体の責務」と「財政上の措置等」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_3.html

多様な教育機会確保法の条文案(2015年8月11日付け未定稿)における「目的」と「基本理念」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_2.html

多様な教育機会確保法における財政上の措置の必要性
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_1.html

多様な学び保障法を実現する会総会・公開イベント「多様な教育機会確保法を知ろう」に参加して
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_5.html

教育支援センター実態調査にみる地域格差──第7回不登校に関する調査研究協力者会議①
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_4.html

多様な学び保障法を実現する会「多様な教育機会確保法を知ろう」(2015年7月26日、東京都新宿区)
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_3.html

多様な教育機会確保法案は就学校指定制度の拡大である
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_1.html

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会に参加して
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_6.html

「多様な教育機会確保法(仮称)案」における不登校支援の仕組み
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_5.html

「多様な教育機会確保法(仮称)案」の概要
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_4.html

フリースクール等を義務教育として認めてもよいと考える保護者は63.2%──義務教育に関する意識調査
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_3.html

黒柳徹子著『窓ぎわのトットちゃん』とフリースクール
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_2.html

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会2015年6月16日東京都千代田区
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_1.html

不登校に関する調査研究協力者会議「不登校児童生徒への支援に関する中間報告<たたき台>」
http://r-takayama.at.webry.info/201505/article_1.html







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