不登校に関する調査研究協力者会議「不登校児童生徒への支援に関する中間報告<たたき台>」

 既に新聞報道等もあったように、文部科学省が設置する「不登校に関する調査研究協力者会議」が2015年5月20日に「不登校児童生徒への支援に関する中間報告<たたき台>──一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない支援の推進」を示しています。

この会議は、文部科学省初等中等教育局長の諮問機関として、2015年1月に発足し、不登校児童生徒の社会的自立を支援する観点から、①不登校児童生徒の実情の把握・分析、②学校における不登校児童生徒への支援の現状と改善方策、③学校外における不登校児童生徒への支援の現状と改善方策、④その他不登校に関連する施策の現状と課題について調査研究を行う役割を担っています。毎日新聞によれば、6月にも中間報告をまとめ、計画のモデル案を自治体に示すことを検討する予定になっています。この「中間報告<たたき台>」を目にする機会があったので、簡単に紹介します。

「不登校:「個別支援を」──文科省有識者会議が素案」毎日新聞2015年05月21日東京朝刊)
http://mainichi.jp/shimen/news/20150521ddm041100082000c.html

不登校に関する調査研究協力者会議
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/108/


 この「中間報告<たたき台>」は、本文11頁からなっています。目次は、下記の通りです。

□はじめに~本協力者会議の基本姿勢~
 1 不登校の現状に関する認識
 2 正しい理解に基づく確実な取組の必要性
 3 不登校の要因・背景の多様化と教育の果たす役割
 4 平成15年の報告から現在までの不登校施策の変遷
 5 本協力者会議の審議経過と報告のねらい
□不登校の現状
 1 不登校の定義や現状
 2 不登校の要因・背景の多様化・複雑化
 3 不登校の実態把握の在り方
□不登校に対する基本的な考え方
 1 将来の社会的自立に向けた支援の視点
 2 個別の児童生徒に対する組織的・計画的支援
 3 子供たちの可能性を伸ばす学校の柔軟な対応
 4 働きかけることや関わることの重要性
 5 学校内外を通じた切れ目のない支援の充実
□重点方策
 1 「個別の教育支援計画(仮称)」による困難を抱える児童生徒への支援
 2 不登校児童生徒に対応する教育支援センターの整備促進
 3 既存の学校になじめない子供に対する柔軟な対応
□学校における指導の改善(今後さらに検討)
 1 不登校の児童生徒の発生を防ぐ指導の改善(未然防止)
 2 教育上課題のある児童生徒に対する効果的な指導の在り方
 3 不登校児童生徒を支える学校・教育委員会の支援体制


 文科省が設置した不登校に関する調査研究協力者会議の報告には、不登校学校不適応対策調査研究協力者会議の平成4年3月報告「登校拒否(不登校)問題について」、不登校問題に関する調査研究協力者会議の平成15年3月報告「今後の不登校への対応の在り方について」(平成15年報告)がありますが、今回の「中間報告<たたき台>」も、これらの報告における不登校への基本認識を踏襲したものと言えます。

前回の「平成15年報告」は、当時「ひきこもり」が社会問題化していることもあって、不登校「後」を見据えた進路の支援や家庭への訪問支援などの記載がありましたが、今回の「中間報告<たたき台>」にはそうした内容は見当たりません(中間報告に盛り込むべき必要最小限の事項を記載するということなので、単にそこからもれただけかもしれませんが・・・)。


 さて、今回の「中間報告<たたき台>」の目玉は、毎日新聞も伝えるとおり、「□不登校に対する基本的な考え方」の「2 個別の児童生徒に対する組織的・計画的支援」に出てくる「個別の教育支援計画(仮称)」だろうと思います。実際、この会議に出席した人の話によれば、この点に質問や意見が集中したと言います。「個別の教育支援計画(仮称)」は、具体的には、

「○ 不登校児童生徒への効果的な支援については、個々の児童生徒ごとに、不登校となったきっかけや不登校の継続理由を適切に把握し、その児童生徒に合った支援策について学校が当該児童生徒と保護者等と話し合い、その支援策を「個別の教育支援計画(仮称)」(以下、「支援計画」)として策定し、その計画を組織的・計画的に実施していくことが効果的な支援であると考える。」(中間報告<たたき台>6頁)

と書かれており、「学校」 が策定します。さらに、この「支援計画」を実施しても、既存の学校になじめない場合は、「教育支援センターや不登校特例校、ICTを使った学習支援など、学校以外の場を活用した支援も検討する必要がある」(中間報告<たたき台>6頁)と書かれ、学校内外を通じた切れ目のない柔軟な支援が求められています。


今回、不登校に関する調査研究協力者会議に平行して、「フリースクール等に関する検討会議」(2015年1月30日第1回開催)が文科省に設置されています。フリースクールについては、「5 学校内外を通じた切れ目のない支援の充実」の3項目目に「○ また、学校以外の学習機会(フリースクールや家庭など)を通じた支援としては、個別支援の重要性に鑑み、その支援の在り方を含め、学びの支援体制を構築することが必要である。」(中間報告<たたき台>7頁)と言及されています。

フリースクール等に関する検討会議
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/107/


さて、「個別の教育支援計画(仮称)」は、「□重点方策」(中間報告<たたき台>7~9頁)のところで、もう少し詳しく概略が示されています。私が見たところ要点は、以下の通りです。

・「支援計画」は、担任、養護教諭、スクールカウンセラ一、スクールソーシャルワー力一等の学校関係者が「個別の教育支援計画(仮称)」を策定し、当該児童生徒や保護者等と話合いのうえで決定する。
・「支援計画」の実施は、学校や教育支援センター(適応指導教室)を中心とする。
・「支援計画」の実施機関として、また、無償の学習機会の確保のため、教育支援センターの整備を推進する。
・教育支援センターの整備に当たっては、自治体が設置し民間の協力のもと運営する公民協営型も検討する。
・既存の学校になじめない子どもについては、社会的自立の観点から、学校以外の場を活用した支援も検討する。
・学校以外の具体的な支援には、不登校特例校やITCを使った学習支援という文科省の施策が既にあり、現在、検討が進んでいるフリースクールや家庭なども視野に入れる(ただし、不登校特例校は一条校)。


上記で強く印象を受けたのは、「教育支援センターの整備」という点です。

このような支援計画実施の役割を教育支援センターが実際に担うには、かなりの人員と予算が必要になってくると思います。民間ノウハウの導入にふれているのも、学校関係者だけでは教育支援センターの運営がままならないという危機感の表れかもしれません(ただし、「適応指導教室の運営委託」は、平成15年3月報告「今後の不登校への対応の在り方について」でも、既に言及があります)。

資料によれば、平成25年(2013年)度の全国の適応指導教室の数は、1286カ所で、1万4310人の子どもが利用しています。不登校の子どもの数が11万9617人なので、利用率は12%となります。不登校の子どもや親の立場から見れば、信頼できる大人の居る無料で通える場所が増えることは、基本的に望ましいことと言えます(多様性も増えると、なお良い)。今後の注目点は、教育支援センター整備にかける予算額や増設数などの具体的な数値目標ということになろうかと思います。

いずれにせよ、今回の「中間報告<たたき台>」の特徴は、(1)「個別の教育支援計画(仮称)」の提案と、(2)その実施機関としての「教育支援センター(適応指導教室)の整備・拡充」の提案、の2点になるように思われます。どちらも、現行制度の枠内における提案で、「支援方法の洗練と量的拡大」とまとめられるように思います。


「通信制高校があるじゃん!」(http://www.stepup-school.net/)によれば、次回第7回会議(6月26日)で「不登校児童に関する中間報告」の素案が発表されるとのことです。


「文部科学省が「不登校に関する調査研究協力者会議(第6回)」を開催」
http://www.stepup-school.net/information/%E6%96%87%E9%83%A8%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9C%81%E3%81%8C%E3%80%8C%E4%B8%8D%E7%99%BB%E6%A0%A1%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%8D%94%E5%8A%9B%E8%80%85%E4%BC%9A/




<高山龍太郎のブログより>

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「個別学習計画の支援・勧告・修了」と「就学義務の履行」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_6.html

多様な教育機会確保法の条文案(2015年8月11日付け未定稿)における「個別学習計画の認定と修正」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_5.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「基本指針」と「多様な教育機会の確保に関する施策」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_4.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「国と地方公共団体の責務」と「財政上の措置等」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_3.html

多様な教育機会確保法の条文案(2015年8月11日付け未定稿)における「目的」と「基本理念」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_2.html

多様な教育機会確保法における財政上の措置の必要性
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_1.html

多様な学び保障法を実現する会総会・公開イベント「多様な教育機会確保法を知ろう」に参加して
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_5.html

教育支援センター実態調査にみる地域格差──第7回不登校に関する調査研究協力者会議①
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_4.html

多様な学び保障法を実現する会「多様な教育機会確保法を知ろう」(2015年7月26日、東京都新宿区)
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_3.html

多様な教育機会確保法案は就学校指定制度の拡大である
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_1.html

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会に参加して
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_6.html

「多様な教育機会確保法(仮称)案」における不登校支援の仕組み
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_5.html

「多様な教育機会確保法(仮称)案」の概要
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_4.html

フリースクール等を義務教育として認めてもよいと考える保護者は63.2%──義務教育に関する意識調査
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_3.html

黒柳徹子著『窓ぎわのトットちゃん』とフリースクール
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_2.html

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会2015年6月16日東京都千代田区
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_1.html

不登校に関する調査研究協力者会議「不登校児童生徒への支援に関する中間報告<たたき台>」
http://r-takayama.at.webry.info/201505/article_1.html







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