地域社会学Iの授業概要──地域社会学I2012年10月5日

富山大学では、10月2日から後期の授業が再開しました。後期は、地域社会学Iの講義を担当します。5日は初回でしたので、授業のねらいや進め方などの授業概要の話をしました。「都市的な環境が、どのように、人びとの生活様式(価値観や人間関係の形態など)に影響をあたえているのか」の理解を目標に、都市社会学の原型をつくったシカゴ学派の業績を紹介し、その後の批判と修正を見ていくというかたちで授業を進めていく予定です。成績評価は、現時点では、レポートにしようと考えています。


講義ノートはこちら(MS Word, 28Kb)
https://1drv.ms/w/s!Au4k6YKQM1eZgY5yIYbBJPWQwFP7iw


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講義ノートテキスト版
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20121005地域社会学I
地域社会学Iの授業概要

授業の目標
 「都市的な環境が、どのように、人びとの生活様式(価値観や人間関係の形態など)に影響をあたえているのか」の理解
 都市的な環境
 狭い空間に大量の人が住むことによって、人びとのコミュニケーション密度が高まった環境(←→ 村落的な環境)


都市を分析する際の視角
 社会的な諸条件 → 都市的な環境の成立 → 都市に暮らす人びとの生活様式
 (1)都市的環境の成立(従属変数としての都市)
 問い:都市に人間が集中することを可能にする諸条件は何か
 市民革命、産業革命、人口爆発、交通の発達など
 (2)都市に暮らす人びとの生活様式(独立変数としての都市)
 問い:都市の成立は、どのような生活を人びとにもたらしたのか
 都市社会学では、上記(2)の都市を独立変数として見ることが多い


都市に人間が集中することを可能にする諸条件
 19世紀になって近代的な大都市が現れる
 大都市が成立するには、人びとの移動の自由とそれを可能にする手段の両方が必要になる。そうした社会的な条件をもたらしたのが、市民革命、産業革命、人口爆発、交通の発達など。
 市民革命
 絶対王政の政治的支配を打倒。領主制と身分制の打破。
 イギリスのピューリタン革命(1640-60年)と名誉革命(1688-9年)、アメリカ独立革命(1775-83年)、フランス革命(1789-99年)、日本の明治維新(1868年)など
 産業革命以前は人が生産の要だったので、支配者は、権力の源泉である人の移動を制限した。市民革命によって、そうした制限がなくなった。
 産業革命
 人力・畜力・自然力による生産から、機械(蒸気機関・ガソリンエンジン・電動モーターなど)の力による生産へ
 18世紀末:イギリス、19世紀中頃:フランス・ベルギー・ドイツ・アメリカ、19世紀末:スウェーデン・日本、20世紀初め:ロシア・カナダ
 農業にたずさわらずにすむ人が増える → 農地に縛られずに生きられる
 人口爆発
 日本:江戸時代末期3000万人 → 現在1億2000万人
 人口転換:多産多死から多産少死へ → 人口の急増 → 農地不足のために農村で生活できなくなった人びとが都市へ流入
 医療の進歩や衛生観念の普及、栄養の改善による乳児死亡率の低下
 交通の発達
 農民や移民を都市に吸収
 鉄道による東京─青森間の所要時間(町村・西澤 2000: 15)
 1891(明治24)年:26時間25分
 1913(大正2)年:17時間15分
 1934(昭和9)年:12時間45分
 2003(平成15)年:5時間12分(飛行機利用3時間13分)
 2012年(平成24年):3時間52分(はやて+スーパー白鳥)


都市社会学の原型としてのシカゴ学派
 上記のような社会的条件のもと成立した都市的な環境は、人類にとって得体の知れない未曾有のことがら。
 旧来の村落的な環境で育ってきた人びとにとって、都市的な環境のもとで繰り広げられている人びとの生活様式は問題だらけのように映る。
 「こうした都市的な環境における生活様式は、実際どのようなものであり、どのように生じてきたのか」という疑問が生じる。
 こうした疑問に対して社会学の立場から探求したのが、20世紀初頭のシカゴ学派社会学。シカゴ学派の社会学者たちは、人口急増中のシカゴを研究対象として、こうした疑問の解明に努めた。その結果、都市社会学における基本的な考え方をつくりだした。


シカゴ学派に対する批判と修正
 シカゴ学派の都市社会学は、その影響力の強さゆえに、後の研究者にとって「乗りこえられるべき存在」であった。
 その結果、シカゴ学派の考え方を検証しようとする研究が多数生まれた。
 そうしたシカゴ学派への批判と修正について、地域社会学Iの授業では、大きく「空間構造」「人間関係」「歴史的限定性」の3点から見ていく。


授業のスケジュール
1. 都市的環境の対照としての村落的環境
ユイの仕組みとその崩壊
2. 都市社会学の原型としてのシカゴ学派
人間生態学、同心円地帯モデル、アーバニズム論
3. シカゴ学派の修正1──空間構造をめぐって
セクター理論、多核心理論、社会文化生態学
4. シカゴ学派の修正2──人間関係をめぐって
コミュニティ喪失論、コミュニティ存続論、コミュニティ解放論
生態学的決定論、社会構成理論、都市下位文化理論
5. シカゴ学派の修正3──歴史的限定性をめぐって
前産業型都市、世界都市論、都市アメニティ論


高山龍太郎のブログ
http://r-takayama.at.webry.info/
 講義ノートを掲載予定

レポートによる成績評価の予定
 現時点では、レポートによる成績評価を予定している。字数は4000字から5000字。


参考文献
中野正大・宝月誠編, 2003, 『シカゴ学派の社会学』 世界思想社.
倉沢進編著, 1999, 『都市空間の比較社会学』 放送大学教育振興会.
森岡清志編著, 2004, 『都市社会の人間関係(改訂版)』 放送大学教育振興会.
松本康, 2005, 「都市空間の変容と住民」宮島喬編『現代社会学(改訂版)』有斐閣, 226-49.



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