調査票調査の論理──国際社会学I2012年5月22日

前回5月15日の授業では、「国際比較調査の進め方」について見てきました。今回5月22日の授業では、国際比較調査のような調査を背後で支えている「調査票調査の論理」について説明していきました。具体的には「標準化」「妥当性」「信頼性」「代表性」「再現可能性」の5つです。これからの授業で国際比較調査の具体的な手順を解説するつもりですが、「なぜそのような手順でおこなうのか」について理解するには、そうした基本的なロジックを知っておいてもらう必要があると考えたからです。非常に抽象的な話になってしまいましたが、大事な話ですので、しっかり理解してほしいと思います。


講義ノートはこちら(MS Word, 31Kb)
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講義ノートテキスト版
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20120522国際社会学I(調査票調査の論理)

調査票調査の論理

調査票調査を評価する基準(メイ 2005: 131-2)
(1) 標準化──比較の前提
 測定の条件を同一にすること
 回答者に対する「刺激(質問という働きかけ)の等しさ」
 具体的には、面接法によるサーベイでは、すべての回答者が、調査員によって、同じ質問を、同じ意味づけ、同じ言い回し、同じ抑揚、同じ順番、同じ状況で問いかけられたということ
 回答とは、「刺激(質問という働きかけ)に対する反応」
(2) 妥当性──仮説の操作化
 意図したものを実際に測定していること
(3) 信頼性──測定の安定性
 同一の対象に対して同一の手法で測定を行えば、同一の測定結果が得られること
 質問文や回答選択肢が誤解の生じやすいものであってはならない
(4) 代表性──標本調査の鍵
 サンプルが調査対象の母集団をよく代表していること
(5) 再現可能性──手順の公開
 調査に用いた測定を、他の調査者が再現できる可能性
 調査の手順が公開されていれば、その手順にもとづいて追試が可能になる


標準化(メイ 2005: 316)
 標準化とは
 明らかにしたい(測定したい)ことがら以外は、すべて同じ条件にしなければならない。
 調査票調査でいえば、明らかにしたい「質問内容」以外のことがらは、すべて同じに条件にしなければならない
 標準化の重要性を示す例
 ある質問について「はい」と答えた人の比率:A国20%、B国40%。この20%の差は何に起因するか。
(1) A国民とB国民の態度が異なっている
(2) 回答者の選び方によって違いが生じた
(3) 質問と回答のやりとりから違いが生じた
 調査として明らかにしたいのは、上記の(1)。したがって、(2)~(3)が結果に影響をおよぼしている可能性を減らすことが肝要
 (2)は、代表性の問題
 サンプリングの際に考慮しなければならない
 (3)は、妥当性と信頼性の問題
 調査票作成と実査の際に考慮しなければならない

実験計画法
 実験計画法は、標準化がもっとも保障されている方法
 実験の条件をコントロールしやすい理系分野で多用される
 実験計画法
 定義:ある「ことがら」の効果(因果関係)を確定するために、その「ことがら」以外の条件をすべて同一にして、2つ以上のグループの間で結果を比較する
 論理
 測定したい「ことがら」以外の条件が、2つのグループにおいてすべて同一であるにもかかわらず、結果において、2つのグループに違いがあらわれたならば、その結果の違いは、測定したい「ことがら」の違いが原因である。
 手順
 (1)被験者をランダムにそれぞれのグループ(実験群と統制群)に割り当てる
 (2)それぞれのグループにコントロールされた刺激を与える
 (3)コントロールされた刺激ごとに、行動や生理的な変化を測定する
 (4)測定された事象のパターンから、原因と結果の連鎖が確証される
 実験法の核心
 測定したい「ことがら」以外について、いかに、実験群と統制群の条件を等しくするか
 被験者を実験群と統制群のいずれかに振り分けるとき、ランダムな割当の手続きをとる
 言葉
 実験群(実験グループ、治療群)
 効果を測定したい「ことがら」を与えるグループ
 例えば、薬、福祉サービスなど
 統制群(コントロール・グループ、対照群)
 効果を測定したい「ことがら」を与えないグループ
 コントロール
 効果を測定したい因果関係を攪乱する可能性のある要因を除去するということ
 プラシーボ
 新薬の臨床効果を調べる実験法で、統制群に与えられる効果のない偽薬のこと
 薬の薬理的な効果だけでなく、薬を飲んだということ自体が、患者に効果を与える。「病は気から」


妥当性(メイ 2005: 129-32)
 妥当性とは、意図したものを実際に測定していること
 調査票調査の道具立て(メイ 2005: 130-1)
 仮説
 これからその真偽を問おうとしている肯定文
 例:「国によって、マナーの善し悪しは異なる」
 変数
 変化する値をとる概念
 「身長」という概念は、「150cm」や「182cm」などの値をとる
 「国」という概念は、「日本」「中国」「アメリカ」「インド」などの値をとる
 「値」は、数値とはかぎらない
 「マナー」という概念も、「良い」「悪い」などの値をとる変数と考えられる
 仮説とは、変数間の関係についての推論のこと
 上記の仮説の例では、「国」という変数と「マナー」という変数の関係について、その真偽が問われている
 操作化
 変数を、具体的に測定できる(つまり、データが収集できる)ように変換すること
 調査票調査における仮説の操作化とは、具体的には、変数を質問文と回答選択肢に変換すること
 例:「マナー」という概念の操作化
 質問文:「電車に乗って座席に座っているとき、高齢者に席を譲りますか」
 回答選択肢:「1 はい」「2 いいえ」
 「マナー」の操作化のやり方は一つとは限らない
 質問文の例
 路上にゴミを捨てない
 近所の人に、朝、必ずあいさつをする
 人の迷惑になることはしない
 行列ができている時には、割り込みをしない
 人が大勢いるところでは、携帯電話で話をするのを遠慮する
 回答選択肢の例
 1~10という10段階で回答
 よくあてはまる、ややあてはまる、どちらでもない、ややあてはまらない、まったくあてはまらない、という5段階で回答
 たくさんある「マナー」という概念の操作化のうち、調査の目的に照らして、「どれがもっとも妥当性が高いか」について検討する。


参考文献
 メイ, T, 2005,『社会調査の考え方──論点と方法』世界思想社.
 坂田周一, 2003, 「グループ比較の実験デザイン──社会福祉援助の効果分析(2)」『社会福祉リサーチ──調査手法を理解するために』 有斐閣アルマ, 63-80.
 真鍋一史, 2003, 「質問紙法にもとづく国際比較調査の現状と課題」『国際比較調査の方法と解析』慶應義塾大学出版会, 27-44.
 バビー, E., 2005, 「実験法」『社会調査法2──実施と分析編』培風館, 3-27.



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