東アジア社会調査 (EASS)──国際社会学I2012年5月1日

5月1日は、国際的な調査プロジェクトの三つ目として、「東アジア社会調査 」(East Asian Social Survey; EASS)を紹介しました。参加国は日本・韓国・中国・台湾の4つの国と地域で、2006年の第1回調査の後、2年ごとに実施されています。これまで紹介した世界価値観調査(WVS)と国際社会調査プログラム(ISSP)はグローバルな調査でしたが、EASSは東アジアという地域に限定した国際比較調査です。WVSやISSPなどの欧米主体の調査では、東アジアは一括りにされてしまいがちですが、東アジアに住む人びとにとっては、東アジア域内における類似性と差異にも関心があります。EASSは東アジアの研究者が主体の調査なので、そのための調査項目を加えることができます。また、少数の調査チームなので、調査方法を統一してデータの精度を高めることも可能です。日本の調査は大阪商業大学JGSS研究センターが担当し、そのウェブサイトからEASSに関する情報も得ることができます。


「東アジア社会調査」(EASS)公式ウェブページ
http://www.eassda.org

EASSプロジェクトの紹介ウェブページ(大阪商業大学JGSS研究センター)
http://jgss.daishodai.ac.jp/introduction/int_eass_project.html



講義ノートはこちら(MS Word, 32Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/20120501%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6I%EF%BC%88%E6%9D%B1%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E8%AA%BF%E6%9F%BB%EF%BC%89.docx

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講義ノートテキスト版
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20120501国際社会学I(東アジア社会調査)

国際的な調査プロジェクト3──東アジア社会調査

国際社会学Iレポート課題(暫定)
 授業の内容をふまえて、国際調査の困難と可能性について述べなさい
 3000~4000字


東アジア社会調査 (East Asian Social Survey; EASS)の概要(岩井・保田編 2009; 岩井ほか 2011)
EASSの概要
 EASS公式ウェブページ
http://www.eassda.org/
 EASSプロジェクトの紹介ウェブページ(大阪商業大学JGSS研究センター)
http://jgss.daishodai.ac.jp/introduction/int_eass_project.html
 EASS2006の調査概要(調査票やコードブックも公開)
http://jgss.daishodai.ac.jp/surveys/sur_eass2006.html
 EASS2008の調査概要(調査票やコードブックも公開
http://jgss.daishodai.ac.jp/surveys/sur_eass2008.html
 参加国
 日本、韓国、中国、台湾の4つの国と地域
 アメリカの総合的社会調査(General Social Survey; GSS、1972年開始)を範とする調査を実施してきた各国の大学・研究機関がEASSも実施
 日本の調査は、大阪商業大学JGSS研究センターが担当
 2006年に第1回調査がおこなわれ、以後2年おきに実施
 2003年の「JGSS国際シンポジウム2003」を契機として、EASSがスタート

EASSの特徴(岩井ほか 2011: 18-9)
 (1)東アジアの研究者が主体
 欧米主体の調査では、東アジアは一括りにされてしまいがち
 少数の調査チームなので、調査方法を統一でき、データの精度を高められる
 (2) GSSを範とするすでに実施中の継続調査の一部にEASSモジュールを組み込む
 EASSモジュール以外にも、GSSと比較するために各国が継続的に組み込んでいる変数にも共通点が多く、これらの変数も比較に使える
 (3)各国のチームが調査資金に責任をもっているので、4チームが対等な立場で運営している
 担当モジュール
 韓国EASS2006、台湾EASS2008、日本EASS2010、中国EASS2012
 調査の事務局も各国持ち回りで担当する
 韓国2004-5年、台湾2006-7年、日本2008-9年、中国2010-11年
 (4)モジュールのテーマを調査ごとに変え、参加する研究者も入れ替わっている
 テーマが変わるので、そのテーマを専門とする研究者の参加をうながす
 (5)共同で分析をおこない、国際会議でセッションを組んでいる

東アジアの研究者が主体で東アジアの調査をおこなう必要性(湊 2007)
 世界価値観調査の長所と短所
 長所
 規模の大きさ
 97カ国のデータを収集
 短所
 国や地域によって、調査スケジュール、抽出方法、集計仕様などにばらつきがある
 2005年の第5波調査で初めて、日韓台中がそろう
 英語調査票から翻訳する際の精度が悪そう
 Trade Unions(労働組合)が「貿易組織」、lying in your own interest(自分の利益のためにうそをつく)が「利息に頼って暮らす」と訳されたりしていた
 「これらの点を考慮すると、世界価値観調査のデータは、世界各国の比較分析を可能とするものであるが、無批判に用いることには危険が伴っており、とくに東アジアにおける域内比較分析に用いるデータとしては限界があると言わざるを得ない」(湊 2007: 4)
 国際社会調査プログラム(ISSP)の長所と短所
 長所
 毎年単独テーマを設定し、それを一定期間置いた後で反復することで、国際比較が可能になると同時に、異時点間の比較も可能になる。
 短所
 国や地域によって調査の実施方法(面接・郵送・配布回収法など)が異なっており、抽出方法や補助サンプルの使い方にも相違がある。
 調査票が欧米的価値観にもとづくものになっている
 EASSの必要性
 たとえば、世界価値観調査では日本・韓国・台湾・中国が「儒教的」(Confucian)という一つのグループにまとめられるが、東アジアに住む人びとにとっては、東アジア域内における類似性と差異に関心がある。
 「東アジアに特徴的な価値観や習慣をより深く分析したい」(EASS2006のコードブックより)
 したがって、東アジアの研究者が主体となる調査が必要である。
 EASSの誕生

EASS参加研究チームが実施する全国規模の継続調査(岩井・保田編 2009: 2)
日本 韓国 中国 台湾
調査名 日本版総合的社会調査(Japanese General Social Surveys) Korean General Social Survey 中国総合社会調査(Chinese General Social Survey) 台湾社会変遷調査(Taiwan Social Change Survey)
略称 JGSS KGSS CGSS TSCS
開始年 2000年 2003年 2003年 1984年
調査主体 大阪商業大学JGSS研究センター、東京大学社会科学研究所 成均館大学Survey Research Center 香港科技大学調査研究中心、中国人民大学社会学系 中央研究院社会学研究所
調査方法 面接法と留置法の併用 面接法 面接法 面接法

GSS──JGSSやEASSのモデル
 General Social Survey (GSS)は、シカゴ大学のNational Opinion Research Center(NORC)が1972年から実施
 GSS公式ウェブサイト
http://www3.norc.org/GSS+Website
 GSSは、当初はほぼ毎年、1994年以降は隔年実施。最新は第28回調査(2010年)
 2008年の第27回調査までに、のべ5万人以上が回答し、1万5000以上の著作を生み、毎年40万人以上の学生が利用している
 サンプルの規模:当初は1500人、1994年以降は3000人
 GSSと同様の調査は、ドイツでは1980年に、イギリスでは1983年に、オーストラリアでは1984年に開始

EASSの調査の進め方
 EASSは2006年から2年おきにテーマを変えて実施
 2006年「東アジアの家族」
 2008年「東アジアの文化とグローバリゼーション」
 2010年「東アジアにおける健康と社会」
 2012年「東アジアの社会関係資本」(予定)
 韓国・台湾・中国は、EASSモジュールに加えてISSPモジュールもKGSS・TSCS・CGSSに組み込んでいるので、ISSPとEASSのテーマが重複しないようにしている
 調査方法
 各国の研究チームが実施する全国規模の継続調査に、EASSの共通設問群(EASSモジュール)を組み込む
 EASSモジュールは、約60問(面接で15分以内)
 調査票に余裕がある場合は、各国の判断で、EASSモジュールに関連する設問を加えても良い
 意見項目への回答では、7点尺度のスケールを提示して回答を求める
 「7強く賛成」「6賛成」「5どちらかといえば賛成」「4どちらともいえない」「3どちらかといえば反対」「2反対」「1強く反対」
 参考:「コラム1 「どちらともいえない」の多い日本人」(岩井・保田編 2009: 96-8)
 EASSの共通言語は英語であり、英語で作成したモジュールを各言語に翻訳して調査票に組み込む
 翻訳にかかわる問題
 「英語で作成したモジュールを各国の言語に訳してみると、状況にそぐわない設問も出てきた。そこで、各チームとも、英語と各言語との間で翻訳を繰り返し、4つの社会のいずれにおいても不自然ではないワーディングになるように、英語版の修正を繰り返した。漢字で表記して、意味を確認することも少なくなかった。」(岩井・保田編 2009: 5)
 参考:「コラム2 国際調査における翻訳の工夫」(岩井・保田編 2009: 99-101)
 データの公開
 East Asian Social Survey Data Archive (http://www.eassda.org/)で公開
 データのダウンロードには登録が必要
 アメリカ最大のデータ・アーカイブであるInter-University Consortium for Political and Social Research(ICPSR)に寄託ないしメタデータをおくことを検討中(岩井ほか 2011: 25)


『データで見る東アジアの家族観』
 岩井紀子・保田時男編, 2009, 『データで見る東アジアの家族観──東アジア社会調査による日韓中台の比較』ナカニシヤ出版.から調査結果を紹介。
 基本的属性のほか、「家族観」「出生・子ども観」「結婚観・離婚観」「配偶者選択・夫婦関係」「家族行動」「世代間援助」などについて質問している。

EASS 2006 の調査概要(http://jgss.daishodai.ac.jp/surveys/sur_eass2006.html
日本 韓国 台湾 中国
調査対象 20~89歳の男女 18歳以上の男女 19歳以上の男女 18~69歳の男女
抽出方法 層化2段無作為 層化3段無作為 層化3段無作為 層化4段無作為
計画標本 3998 2500 5032 7872
調査名 Japanese General Social Surveys (JGSS) Korean General Social Survey (KGSS) Taiwan Social Change Survey (TSCS) Chinese General Social Survey (CGSS)
実施時期 2006年10~12月 2006年6~8月 2006年7~8月 2006年9~11月
調査方法 面接・留置法併用 面接法 面接法 面接法
有効回収数 2130 1605 2102 3208
回収率 59.80% 65.70% 42.00% 38.50%



参考文献
 湊邦生, 2007, 「東アジアにおける国際比較社会調査とその課題──世界価値観調査、ISSP、アジア・バロメーター、東アジア価値観国際比較調査からEASSへ」『JGSSで見た日本人の意識と行動──日本版General Social Surveys研究論文集』(JGSS Research Series No.3) 6: 1-23.
 岩井紀子・保田時男編, 2009, 『データで見る東アジアの家族観──東アジア社会調査による日韓中台の比較』ナカニシヤ出版.
 岩井紀子・宍戸邦章・佐々木尚之, 2011, 「East Asian Social Surveyを通してみた国際比較調査の困難と課題」『社会と調査』(社会調査協会) 7: 18-25.















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