国際社会調査プログラム(ISSP)──国際社会学I2012年4月24日

4月24日は、国際的な調査プロジェクトの二つ目として、「国際社会調査プログラム」(International Social Survey Programme; ISSP)を紹介しました。1985年に第1回調査が実施され、毎年違うテーマで調査が繰り返されています。現在の参加国は48カ国で、日本は1993年の調査から参加しています。先週の授業で取り上げた世界価値観調査にくらべ参加国が少なく地域も欧米に偏りがちですが、「社会科学の重要な分野について時代にマッチした調査テーマを共同開発する」という点が魅力だと思われます。

以上のような概要説明の後、ISSPのデータを使った分析の例として、「職業意識の国際比較──仕事の満足度が低い日本人」と「政治意識の国際比較──日本の若者は政治に無関心か?」というタイトルで、それぞれについて書かれた論文の内容を紹介しました。


「国際社会調査プログラム(ISSP)」公式ウェブサイト
http://www.issp.org/


講義ノートはこちら(MS Word, 29Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/20120424%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6I%EF%BC%88%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%EF%BC%89.docx

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講義ノートテキスト版
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20120424国際社会学I(国際社会調査プログラム)

国際的な調査プロジェクト2──国際社会調査プログラム

国際社会調査プログラム(International Social Survey Programme: ISSP)の概要(小野寺 2003)
 ISSP公式ウェブサイト
http://www.issp.org/
 運営規則(The working principles)
http://www.issp.org/uploads/editor_uploads/files/isspchar.pdf
 参加国
 1984年に、ドイツ、アメリカ、イギリス、オーストラリアの4カ国で発足し、1985年に第1回調査を実施
 日本は、1993年の調査から参加。日本の調査は、NHK放送文化研究所が担当。
 現在、参加国は48カ国
 アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チリ、中国、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、ドミニカ共和国、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、パレスチナ、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スロヴァキア、スロベニア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、トルコ、ウクライナ、ウルグアイ、アメリカ、ベネズエラ
 参加の条件
 1国1機関
 調査を実施できる予算が確保できること
 ランダムサンプリングで決められた調査を毎回実施できること
 ISSPにおける調査の取り決め
 (1)社会科学の重要な分野について時代にマッチした調査テーマを共同開発する
 (2)質問は15分程度で、定例の国内調査に追加しておこなう
 (3)共通の基本属性を幅広く加える
 (4)調査結果をできるだけ早く利用できるようにする
 調査テーマ
 1985年より毎年単独テーマで調査を実施
 テーマを決める際に考慮すること
 (1)時代にあっていること
 (2)データ利用の多いこと
 (3)適当な期間をおいて同じテーマを反復すること

調査テーマ(1985-2014年)(http://www.issp.org/page.php?pageId=4より)
1985 Role of Government I 2000 Environment II
1986 Social Networks 2001 Social Relations and Support Systems
1987 Social Inequality 2002 Family and Changing Gender Roles III
1988 Family and Changing Gender Roles I 2003 National Identity II
1989 Work Orientations I 2004 Citizenship
1990 Role of Government II 2005 Work Orientations III
1991 Religion I 2006 Role of Government IV
1992 Social Inequality II 2007 Leisure Time and Sports
1993 Environment I 2008 Religion III
1994 Family and Changing Gender Roles II 2009 Social Inequality IV
1995 National Identity I 2010 Environment III
1996 Role of Government III 2011 Health
1997 Work Orientations II 2012 Family, Work and Gender Roles IV
1998 Religion II 2013 National Identity III
1999 Social Inequality III 2014 Citizenship II
 調査テーマは政治・労働・家族・宗教・環境など多岐にわたるが、社会政策に関係するものが多い印象

 調査票の例
 2009年 社会的不平等4
http://www.issp.org/documents/issp2009.pdf
 2010年 環境3
http://www.issp.org/uploads/editor_uploads/files/ISSP_2010_environment_questionnaire_FINAL.pdf
 2011年 健康
http://www.issp.org/uploads/editor_uploads/files/2011_Health_questionnaire.pdf
 2012年 家族・仕事・性別役割4
http://www.issp.org/uploads/editor_uploads/files/ISSP2012_finalsource.doc
 調査票作成の進め方
 多様な社会・文化・地理的状況のバランスを勘案し、調査ごとに調査票作成グループが選ばれる
 自薦・他薦により候補があげられ、投票により5~6カ国が選ばれる
 調査実施3年前の総会で、調査テーマを決定する
 2年前の総会で、調査の枠組みと調査項目の絞り込みをおこなう
 1年前の総会では、1問ずつ全質問について検討し、調査票を完成する。
 問題のある質問はその場で修正され、投票で過半数の同意を得られない質問は採用されない
 調査票決定の2~3ヶ月後には、英語の調査票原票が各国に配られる。各国は、それぞれ調査票を翻訳する。
 基本属性項目
 性別、年齢層、学歴、教育年数、職業、宗教、世帯年収、本人の年収、階層、支持政党、婚姻歴、配偶者の職業、世帯人数、地域特性など
 基本属性の変数コードを多数の国の間で統一することはかなり困難
 データの公開
 ドイツのGESIS Data Archive and Data Analysis (GESIS Data Archive)が、データの統合・整理・保管・公開などを担当する
http://www.gesis.org/en/
 データはZACAT(GESIS Online Study Catalogue)からダウンロード可能(無料、登録必要)
http://zacat.gesis.org/webview/index.jsp


職業意識の国際比較──仕事の満足度が低い日本人(西・荒牧 2009)
 西久美子・荒牧央, 2009, 「仕事の満足度が低い日本人──ISSP国際比較調査「職業意識」から」『放送研究と調査』(日本放送出版協会) 59(6): 18-31.からISSPの調査結果を図表にもとづいて紹介
 「職業意識」をテーマとする2005年のISSPの調査結果を紹介している論文
 日本人の就業状況や職業意識の特徴(西・荒牧 2009: 28)
 18~64歳で職業を持っている人の割合は高く、労働時間も長い。
 仕事をするうえで、「昇進」や「独立性」を重要だと考える人は少ない。
 職業を持っている人は、仕事の満足度が低く、自分お仕事に対する評価が低い。
 仕事のストレスを日常的に感じている人が多い一方で、今の職場を離れようと考える人は少ない。


政治意識の国際比較──日本の若者は政治に無関心か?(高橋 2011)
 高橋征仁, 2011, 「政治的関心のモジュール性と政治文化──ISSP国際社会調査プログラムの2次分析の試み」『社会と調査』(社会調査協会) 7: 26-33. からISSPの2次分析の結果を図表にもとづいて紹介
 「シチズンシップ」をテーマとする2004年のISSPデータ(39地域、N=52550)を2次分析した論文
 図1:政治的無関心の年代別平均(高橋 2011: 27)
 「あなたは政治に関心がありますか」に対する5件法の回答
 39地域の平均では、政治的関心は20代からほぼ直線的に上昇した後、60代前後から低下していく
 日本の若者の政治的関心は低くない。日本の高齢者の政治的関心が高いので、相対的に若者の政治的関心が低く見えるだけ。
 図2:20代男性の政治的関心の高さと年齢の標準回帰係数(高橋 2011: 28)
 若者の政治的関心の高さという点で東西間の文化差が存在する一方で、政治的関心の加齢効果という点では南北間の文化差が存在する
 I西欧文化圏
 旧西ドイツ、イギリス、アイルランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、フランス、デンマーク、スイス、フランダース(ベルギー)、フィンランド)
 若者の政治的関心が高いが、政治的関心の年代差もある程度大きい
 II東欧文化圏
 旧東ドイツ、オーストリア、ハンガリー、チェコ、スロヴェニア、ポーランド、ブルガリア、ロシア、スペイン、ラトビア、スロバキア、キプロス、ポルトガル)
 若者の政治的関心は低く、政治的関心の年代差がかなり大きい
 III東アジア文化圏
 日本、台湾、韓国
 若者の政治的関心は低く、政治的関心の年代差がかなり大きい
 IV北米文化圏
 アメリカ、カナダ
 若者の政治的関心は高いが、政治的関心の年代差はそれほど大きくない
 V中南米文化圏
 チリ、ブラジル、ベネズエラ、メキシコ、ウルグアイ
 政治的関心の年代差はほとんどみられない
 図3:東欧革命時の若者の政治的関心の高揚と沈静化(高橋 2011: 29)
 ISSP1990のデータには1989年の東欧革命時の若者の熱狂がはっきりと刻み込まれている
 1989年11月9日、ベルリンの壁崩壊
 図4:4つの政治的志向の強さ(因子得点)の年代別比較(高橋 2011: 31)
 「問2:善い市民」「問3:市民集団への規制」について因子分析をおこなうと、以下の4因子が抽出された
 α救済志向
 質問「他国の貧しい人々を助ける」「自国の貧しい人々を助ける」に強くく反応
 傾向:大きな男女差が見られるが、年代差はそれほど大きくない
 β民主志向
 質問「政府を監視」「社会的団体で活動」「投票へ行く」に強く反応
 傾向:加齢による増加傾向が顕著(秩序志向と同じ)
 γ秩序志向
 質問「法規を守る」「脱税しない」に強く反応
 傾向:加齢による増加傾向が顕著(民主志向と同じ)
 δ自由志向
 質問「暴力的反政府組織の集会を許容する」「人種偏見の集会を許容する」に強く反応
 傾向:加齢によって大きく減少していく
 図5・6:ジニ係数と政治的関心の加齢効果、救済志向文化との関連(高橋 2011: 31)
 ジニ係数
 所得・資産分配の不平等度などを示す指標の一。係数は0と1の間の値をとり、値が1に近づくほど不平等度が高くなる。イタリアの統計学者ジニC.Giniが提示。(デジタル大辞泉)
 (1)経済的格差が大きい地域ほど政治的関心の加齢効果が小さい。若者が相対的に政治に関心をもつ。
 (2)救済志向の強い地域グループ(図中白抜き記号)は、図中右側に多く見られ、救済志向の文化と経済的格差が関連をもつ
 (3)救済志向の強いグループでは、ジニ係数と加齢効果の強い負の相関が見られたのに対して、救済志向の弱いグループでは統計的に有意な相関は見られなかった
 「つまり、救済志向の強い地域では、ジニ係数が大きいほど若者が相対的に政治的関心をもっていることになる。」(高橋 2011: 31-2)



参考文献
 小野寺 典子, 2003, 「ISSPの国際調査」『日本世論調査協会報』(財団法人日本世論調査協会) 92: 18-27.
 西久美子・荒牧央, 2009, 「仕事の満足度が低い日本人──ISSP国際比較調査「職業意識」から」『放送研究と調査』(日本放送出版協会) 59(6): 18-31.
 高橋征仁, 2011, 「政治的関心のモジュール性と政治文化──ISSP国際社会調査プログラムの2次分析の試み」『社会と調査』(社会調査協会) 7: 26-33.






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