世界価値観調査(World Values Survey)──国際社会学I2012年4月17日

4月17日は2回目の国際社会学Iの授業でした。前回の1回目はイントロダクションということで、授業の進め方について説明しました。国際社会学Iは大きく前半と後半にわかれ、前半は国際的な調査の具体例について概説し、後半は社会調査(特に調査票調査)の手順について概説する予定です。ちなみに、この国際社会学Iは、社会調査士資格のB科目に認定されています。

2回目の授業では、国際的な調査プロジェクトの具体例として「世界価値観調査(World Values Survey)」を紹介しました。1981年に開始されて、現在、第6波(wave)の調査が進行中です。第5波調査までに、97カ国のデータが収集されています。その調査対象の母集団の人口は、世界人口の88%にあたるそうです。人びとの信念や価値観などについて、これほど大規模に経験的なデータを収集している調査は、世界価値観調査のほかになかなかありません。

授業では、世界価値観調査の概要を説明した後、第5波調査のデータの単純集計や国別ランキングなどを示しながら世界における日本人の価値観の特徴について確認しました。授業の最後に、世界価値観調査の会長を務めるロナルド・イングルハート(Ronald Inglehart)らによる「世界文化地図」(The WVS Cultural Map of the World)を見ていきました。


「世界価値観調査」公式ウェブサイト
http://www.worldvaluessurvey.org/


講義ノートはこちら(MS Word, 26Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/20120417%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6I%EF%BC%88%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BE%A1%E5%80%A4%E8%A6%B3%E8%AA%BF%E6%9F%BB%EF%BC%89.docx

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講義ノートテキスト版
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20120417国際社会学I(世界価値観調査)

国際的な調査プロジェクト1──世界価値観調査

世界価値観調査(World Values Survey)の概要(WVS 2008)
 公式ウェブサイト
http://www.worldvaluessurvey.org/
 世界価値観調査協会(The World Values Survey Association)
 スウェーデンのストックホルムにある非営利の協会
 会長(president):Ronald Inglehart(ミシガン大学、アメリカ)
 1981年、1990年、1995年、2000年、2005年の5回実施
 第6波調査(2010-12年)が実施中
 国ごとに実施年がずれるので、「波」(wave)と表現する
 第5波調査までのデータ収集
 97カ国のデータが収集された
 世界人口の88%をカバー
 貧しい国から豊かな国まで、権威主義的体制の国から自由で民主的な国まで、主要な文化的ゾーンをカバー

これまでの調査参加国と回答者数(WVS 2008: 5)
調査実施年 調査参加国 世界の人口 回答者数
第1波 1981-84年 20カ国 47億人 2万5000人
第2波 1989-93年 42カ国 53億人 6万1000人
第3波 1994-98年 52カ国 57億人 7万5000人
第4波 1999-2004年 67カ国 61億人 9万6000人
第5波 2005-08年 54カ国 67億人 7万7000人
第1~4波までの集合データ 80カ国 25万7000人

 共通の調査票を使用
 調査項目
 宗教religion, 性別役割gender roles, 労働意欲work motivations, 民主主義democracy, 望ましい統治good governance, 社会関係資本social capital, 政治参加political participation, 他集団への寛容さtolerance of other groups, 環境保護environmental protection and 主観的幸福subjective well-being
 2005年の日本の調査票では、82問(フェイスシートを除く)の質問がなされている(電通総研・日本リサーチセンター編, 2008: 220-55)
 調査デザイン
 グローバルな研究者のネットワーク
 調査に参加してくれる主導的な研究者を調査対象の国からリクルートする
 すべての社会から集められたデータは、すべての調査参加者が利用できる
 すべての調査参加者が、データの分析と解釈や知見の発信において協力し合う
 グローバルなデータの提供
 世界価値観調査は、世界人口の大部分をカバーした信念や価値観に関する唯一の経験的なデータ
 何千もの学術刊行物で引用されたり、主要なメディアで報道されてきたりした
 世界価値観調査のデータは、公式ウェブサイトで、無料で利用できる
 実査
 現地の調査機関によって対面式の面接調査がおこなわれ、学術的な研究者によってスーパーバイズされる
 規定のルールと手順によって調査がおこなわれる
 現地の言葉に翻訳されたコア調査票をもちいる
 サンプリングと記録手順は、事前に、世界価値観調査実行委員会(WVS Executive Committee)の許可を受ける必要がある
 現地調査機関は、実査の間、チェックリストにしたがって報告する


単純集計による国ごとの比較──国ごとの多様性
 電通総研・日本リサーチセンター編, 2008, 『世界主要国価値観データブック』同友館.から、回答結果の単純集計や国別ランキングを紹介


イングルハートの世界文化地図(吉田 2010)
 調査に参加した国々の特徴を多変量解析によってグループ分けし、空間的に表現する
 「主因子法による因子分析」(多変量解析の一種)をもちいて、説明力の高い2つの次元を抽出。
 多変量解析:複数の値からなるデータ(多変量データ)をもとにして、データ間の相互関連を分析する統計学的手法の総称。重回帰分析、因子分析、コレスポンデンス分析など.
 因子分析によって抽出された2つの次元
 (1)<伝統的権威 対 世俗=合理的権威>の次元
 伝統的権威(一般的には宗教的権威)への服従、家族や共同社会への忠誠および共有の規範
 世俗=合理的権威:権力が合理的・法的規範により正当化され、経済的蓄積や個人の業績重視に結びつく
 (2)<生存価値観 対 自己表現価値観>の次元
 生存価値観:自主性や自己表現より経済的・身体的安全性を重んじ、科学技術に比較的高い信頼を置き、環境活動にあまり積極的ではなく、権威的政府を比較的好む
 自己表現価値観:寛容、信頼、主観的幸福(Subjective Well-being)、政治的行動主義、自己表現などを重視する。生活の質を重んじ、女性や性的少数者の解放を重視する。
 イングルハートの世界文化地図の特徴
 経済的な発展と文化的な伝統の融合
 経済的要因:所得水準が高まると、デモクラシーが求められ、世俗化-合理化の志向が高まり、さらには自己表現を重視するにいたる
 文化的要因:宗教などにもとづく文化的な影響も強い
 実際、宗教が国別グループの大きな説明要因になっている


参考文献
 電通総研・日本リサーチセンター編, 2008, 『世界主要国価値観データブック』同友館.
 電通総研・日本リサーチセンター編, 2004, 『世界60カ国価値観データブック』同友館.
 高橋徹, 2003, 『日本人の価値観・世界ランキング』中央公論新社(中公新書ラクレ)。
 World Values Survey, 2008, Brochure about the World Values Survey, (http://www.worldvaluessurvey.org/wvs/articles/folder_published/article_base_110 , 2012.4.16閲覧)
 吉田俊六, 2010, 「価値観と生活意識に関する定量分析──宗教意識をめぐる考察」『富山大学芸術文化学部紀要』 4: 86-104.
 君塚大学, 2003, 「イングルハート版「文化地図」について──測定尺度の検討」『社会学部論集』(佛教大学) 36: 15-34.




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