質的データ分析3コンピュータの利用──地域社会学II2012年2月1日

2月1日は地域社会学IIの最終回でした。授業前半は、先週話そうと思って時間がなくなってしまった「データとストーリーにおける往復運動」の話をしました。質的データ分析は、「データからストーリーへ」という枚挙的帰納法の流れを基本にしますが、ある程度ストーリーが見えてきたら「ストーリーからデータへ」という仮説演繹法的な流れに意識の向きが変わります。このコーディングの往復運動を繰り返すなかで、データとストーリーが密着し、ストーリーの完成度が上がっていきます。

授業の後半は、MS Wordをもちいた簡易型コーディングを紹介しました。Wordにある「箇条書き」「スタイル」「ナビゲーション・ウィンドウ」機能を使ったものです。データの分量が少なく短期間で分析が終わるケースでは、この簡易型コーディングでも十分間に合うと思います。この方法は、レポートや論文執筆の際に言われる「章立て」に該当します。このように質的データ分析は、さまざまな情報を組み合わせて一定の長さの文章を書く際に広く応用できます。

コンピュータを使って本格的に質的データ分析をやりたい人には、佐藤郁哉『QDAソフトを活用する実践質的データ分析入門』新曜社をお勧めします。


それでは、成績評価のためのレポート執筆、頑張ってください。


講義ノートはこちら(MS Word, 26Kb)
https://1drv.ms/w/s!Au4k6YKQM1eZ90ndVDMXk-oo_Zhu


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講義ノートテキスト版
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20120201地域社会学II(質的データの分析3コンピュータの利用)

質的データの分析3──コンピュータの利用

コーディングにおけるデータとストーリーの往復運動
 データからストーリーへ
 枚挙的帰納法:具体から抽象へ
 ストーリーからデータへ
 仮説演繹法:抽象から具体へ
 「ストーリーに合うデータを探す」という方向になると、データ収集の効率が飛躍的に向上する。
 ストーリーがはっきりしないと、念のためにあらゆるデータを集める必要が生じ、データ収集の労力が多大なものとなる。
 このように見ると、コーディングとは、帰納と演繹というデータとストーリーの往復運動を繰り返しながら、ストーリーの完成度を高めていく作業と言える。
 枚挙的帰納法と仮説演繹法については、(伊勢田 2003: 23-40)を参照。


コンピュータでコーディングをすることの利点と欠点
 利点
 データを複写する作業が簡単である。
 データをコーディングする作業、および、コーディング後に調査報告書を執筆する作業の両方。
 コーディング専用ソフトだと、データの原本の情報を自動的に付加してくれて、ワンクリックで原本を確認できる。
 すべてのデータがハードディスクに収納できるので、収納スペースの節約(省スペース)ができ、データを持ち歩いてどこでも作業(携帯性)ができる。
 欠点
 複数人で協力しながらコーディング作業をするのが難しい。
 一人でやるコーディング作業はつらい。
 パソコンは身体を緊張させて、よいアイデアが浮かびにくい。
 アイデアの身体性。散歩をしている時、寝ている時、家事をしている時、風呂に入っている時など、身体がリラックスしている時に、ふと良いアイデアが浮かんだりする。


分量が少なく短期間でコーディングができる場合──簡易型コーディング
 一冊の本を書くような場合ならば、先週話したような複数のカードを作成する本格的なコーディングをする必要があるが、短い論文やレポートを書く程度ならば簡略型コーディングでもこと足りることも多い。
 簡略型のコーディング
 カードは作らない

Microsoft Wordによる簡略型コーディング──「箇条書き」「スタイル」「ナビゲーション・ウィンドウ」
 オープンコーディングをする
 オープンコードを、Wordの「箇条書き」機能を使って列挙する。
 オープンコードを並び替え、コードのグループ化と階層化をする(焦点をしぼったコーディング)
 操作法
 カット&ペースト:位置を移動する
 tab:階層を一つ下げる
 shift+tab:階層を一つ上げる
 Wordの「スタイル」機能を使って、第1階層を「見出し1」、第2階層を「見出し2」、第3階層を「見出し3」などとする。
 「表示」のタブを押して「ナビゲーション・ウィンドウ」にチェックを入れる。
 開いた「ナビゲーション・ウィンドウ」の見出しをクリックすると、クリックした見出しに本文のカーソルがジャンプする。
 フィールドノーツなどの電子ファイルを見て、データの該当箇所をWordの箇条書き機能を使いながらコピー&ペーストする。ペースト後、原本の位置を括弧書きで記入する。
 見出しの移動は、ナビゲーション・ウィンドウを使うと効率的に行える。


分量が多くコーディングが長期間にわたる場合──本格的なコーディング
Maxqda
 本格的なコーディング用ソフト。ドイツ製。
 ホームページ
http://www.maxqda.com/
http://www.maxqda.com/lang/jp
 アカデミック版で7万円くらいする高価なソフト


成績評価
 レポート課題:授業の前半で紹介した六つの研究のうち一つを読んで、その研究を論評しなさい。その際、必ず、その研究でもちいられている調査のやり方にもふれること。
 ワース『ゲットー』、サザーランド『詐欺師コンウェル』、ガンズ『都市の村人たち』、リーボウ『タリーズコーナー』、ウィルソン『アメリカ大都市の貧困と差別』、パットナム『孤独なボウリング』
 字数:4000~5000字(A4サイズの紙を使用)
 〆切:2月13日17時(卒業予定者)、2月27日17時(卒業予定者以外)
 提出先:経済学部教務



参考文献
 佐藤郁哉, 2006, 『定性データ分析入門──QDAソフトウェア・マニュアル』新曜社.
 佐藤郁哉, 2008, 『QDAソフトを活用する実践質的データ分析入門』新曜社.
 伊勢田哲治, 2003, 『疑似科学と科学の哲学』 名古屋大学出版会.




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