質的データの分析2(コーディング)──地域社会学II2012年1月25日

1月25日の授業では、データとストーリーを関連づける「コーディング」の具体的手順を5段階に分けて話しました。佐藤郁哉『フィールドワークの技法』の内容を中心に、KJ法や京大式カードなども参考にした内容になっています。コーディングは、実際に自分でやってみないとなかなか理解しづらいと思いますが、何となくでもイメージをつかめてもらえればうれしいです。

講義ノートはこちら(MS Word, 27Kb)
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講義ノートテキスト版
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20120125地域社会学II(質的データの分析2コーディング)

質的データの分析2──コーディング

コーディングに関する古典
 川喜田二郎『発想法──創造性開発のために』1967年中公新書
 KJ法
 梅棹忠夫『知的生産の技術』1969年岩波新書
 京大式カード


コーディングの実際(佐藤 2002: 315-30)
 コーディングの5段階
 第1段階:オープンコーディングによるテーマのあぶり出し
 第2段階:コードにもとづくカードの作成
 第3段階:焦点をしぼったコーディングによるコードの体系化と階層化
 第4段階:階層化したコードにもとづきカードを並び替える
 第5段階:調査報告書の執筆
 ただし、実際のコーディングでは、上記の各段階を行きつ戻りつすることもある。

第1段階:オープンコーディングによるテーマのあぶり出し
 オープンコーディング
 分析初期の日常語によるコーディングのこと。
 手順
 フィールドノーツやインタビュー記録、ドキュメントなどを何度も繰り返して読み返しながら、その余白などに思いついた「コード」(=小見出し)を記入していく。
 コーディングをし直すこともあるので、コードは「鉛筆」で書いたほうが良いかもしれない。
 文例6・1「コーディングの実例」(佐藤 2002: 319)

第2段階:コードにもとづくカードの作成
 「一つのカードに一つの内容」という原則にもとづいて、たくさんのカードを作成する。すなわち、このカードがジグソーパズルのピースに該当する。
 手順
 オープンコーディングの済んだフィールドノーツなどをコピーする。
 コピーしたものに、カードに貼り付ける部分を鉛筆で囲む。
 鉛筆で囲んだ部分をハサミで切り取り、カードにノリで貼る。
 カードに「オープンコード」を転写し、「原本の場所」を記入する。
 原本の場所を記入しておけば、必要なときにハサミで切り出す前の記録に戻って前後の文脈を確認できる。
 その他、「コメント」記入欄、焦点をしぼったコードを記入する「大分類コード」「中分類コード」「小分類コード」記入欄などを設ける
 梅棹忠夫『知的生産の技術』における「京大式カード」を参照

第3段階:焦点をしぼったコーディングによるコードの階層化
 コーディングの作業が進むと、次第に抽象度の高いコードが使われるようになり、複数のコードの間の関係が明確になっていく。すなわち、最終的なストーリーがおぼろげながら見えてくる。
 焦点をしぼったコーディング
 抽象度の高い言葉を使っておこなわれるコーディングのことで、コード間の階層構造を作る
 図6・3「階層的コードの例」(佐藤 2002: 322)
 手順
 カードの分類:似た内容のカードを集めてグループごとに分類する。
 あるグループに分類された複数のカードの内容を見比べて、そのグループにふさわしい簡潔な名前をつける。この名前がオープンコードより抽象度の高い「焦点をしぼったコード」である。
 このグループのなかにサブグループができないか検討する。そのサブグループにも簡潔な名前をつける。この名前は「サブコード」と呼ばれたりする。
 すべてのグループに名前がつけ終わったら、複数のグループ間の関係(包含関係)を考える。これが、コードの階層化に該当する。これは、ストーリーを見いだす作業と言える。
 川喜田二郎『発想法──創造性開発のために』における「KJ法」を参照

第4段階:階層化したコードにもとづきカードを並び替える
 階層化したコードにもとづきカードを並び替えて、一本のストーリーになるかどうか確認する。
 一本のストーリーにならなければ、コードの階層化を見直す。
 魅力的な一本のストーリーにするために、コーディングをしているときに、理論的覚書や統合的覚書を文章のかたちで記録しておく。
 理論的覚書
 オープンコーディングの際に、フィールドノーツやインタビュー記録の特定部分に触発されて浮かんできたアイデアを文章化したもの
 統合的覚書
 焦点をしぼったコーディングの際に、コード間の階層構造や複数の記載事項の関係を整理する最中に浮かんだアイデアを文章化したもの
 面白いストーリーにするには、同じテーマの先行研究やその他の社会学理論などを常に念頭に置いておく。
 より大きな理論的枠組みに位置づけることで、他の調査研究との比較可能性が出てくる。それは理論的な革新につながるかもしれない。
 ストーリーを他者の前で発表してコメントをもらう。そのコメントにもとづいて、ストーリーを修正する。
 自分一人で考えるには限界があるので、他人に助けてもらう。
 発表をしている最中に、自ら「こういうストーリーだったのか」というひらめきが訪れることもある。発表するという行為自体がストーリーを考えることになる。
 コードによってカードの多いものと少ないものが出てくる。カードの少ないコードは、調査が不十分で情報の足りない項目ということなので、情報を補う方策を考える。
 再調査をおこなうか、それとも、図書館で資料をあさるか。

第5段階:調査報告書の執筆
 ストーリーが固まってきたら、カードの内容を写しながら、調査報告書を執筆する。
 文章を執筆すると、さまざまなアイデアが浮かんでくる。それも、理論的覚書や統合的覚書として記録しておき、調査報告書に活かす。「書くことは(ストーリーを)考えること」でもある。
 執筆している最中に、情報不足の部分に気がつくこともある。


データとストーリーの往復運動
 帰納法:具体から抽象へ
 データからストーリーを見る
 演繹法:抽象から具体へ
 ストーリーからデータを見る
 「ストーリーに合うデータを探す」という方向になると、データ収集の効率が飛躍的に向上する。
 ストーリーがはっきりしないと、念のためにあらゆるデータを集める必要が生じ、データ収集の労力が多大なものとなる。
 このように見ると、コーディングとは、帰納と演繹というデータとストーリーの往復運動を繰り返しながら、ストーリーを改訂していく作業とも言える。



参考文献
 佐藤郁哉, 2002, 『フィールドワークの技法──問いを育てる、仮説をきたえる』 新曜社.



フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる
新曜社
佐藤 郁哉

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発想法―創造性開発のために (中公新書 (136))
中央公論社
川喜田 二郎

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知的生産の技術 (岩波新書)
岩波書店
梅棹 忠夫

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