社会学総論20110617(社会調査とは何か)

社会学総論の前半は、「社会学理論」について、中村真由美先生が授業をしてきました。6月17日より後半に入り、私が「社会調査」をテーマに講義をしていきます。

社会学総論のシラバス
http://syllabus.adm.u-toyama.ac.jp/syllabus/search/details.asp?val_year=2011&renban_cd=13051530

昨年度まで、社会学総論の私の担当部分では、ティム・メイ『社会調査の考え方──論点と方法』(世界思想社、2005年)を教科書に使用してきました。しかし、学部学生には内容が高度という印象があり、今年度から授業内容を大幅に変えることにしました。

過去の講義ノートなどはこちら(高山龍太郎のホームページ)
http://www3.u-toyama.ac.jp/takayama/

社会学総論は、社会学関連科目の「入門」にあたるので、「社会学って面白い!」と思ってもらうことを第一の目標にしました。そのため、学生に興味をもってもらえそうな12の社会調査の事例をとりあげて、調査プロセスがわかるように解説していこうと思っています。

授業に取りあげる調査事例は、次の通りです。

  デュルケム『自殺論』1897年
  ブース『ロンドン民衆の生活と労働』1902-3年
  トマスとズナニエツキ『ヨーロッパとアメリカにおけるポーランド農民』1918-20年
  リンド夫妻『ミドルタウン』1929年
  メイヨー『産業文明における人間問題』1933年
  アドルノ『権威主義的パーソナリティ』1950年
  ルイス『貧困の文化』1959年
  ゴッフマン『アサイラム』1961年
  ベッカー『アウトサイダーズ』1963年
  モラン『オルレアンのうわさ』1969年
  「社会階層と社会移動」全国調査(SSM調査)
  日本版総合的社会調査(JGSS)


今回は、私が講義をする初回だったので、社会調査の意義や歴史について話した後、上記の調査の事例を簡単に紹介していきました。



講義ノートはこちら(MS Word, 27Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/20110617%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6%E7%B7%8F%E8%AB%96.docx


==========
講義ノートテキスト版
==========

20110617社会学総論

1時間目:社会調査とは何か1

盛んになった社会調査
 「全国世論調査の現況」(内閣府大臣官房政府広報室、平成22年版)
http://www8.cao.go.jp/survey/genkyou/h22/h21-genkyou/index.html
 平成21年4月~平成22年3月調査分
 707調査を収録

なぜ現代社会で社会調査が盛んなのか?
 社会の規模の拡大
 交通通信手段の発達によって、誰もが顔見知りのような「小さな社会」から、互いのことをよく知らない「大きな社会」に変わった
 普通に生活しているだけでは、社会全体のことがわからなくなってしまった
 したがって、社会全体のあり方を知るには、社会調査という独自の方法が必要になった

社会調査の歴史
 社会調査のルーツは、皇帝や王様が行った「人口調査」
 聖書の記述:キリストの両親が普段住んでいるナザレから本籍地のベツレヘムへと旅していたのは、皇帝の人口調査のため
 社会調査とは「権力の道具」であり、調査される側には「乱暴で迷惑なもの」であった
 日本の人口調査:国勢調査
 1920年開始で5年ごと
 近代的な社会調査の出発点は、都市貧民の窮状を客観的に明らかにしようとする「貧困調査」(19世紀後半)
 C.ブース(『社会調査へのアプローチ』第2版の66頁を参照)
 一つの地域を精密に調べる「社会踏査」
 貧困の操作的定義:「標準的な大きさの家族で週当たり18から21シリング」
 貧困の空間的な分布状態:ロンドン各地区の貧困状態を地図上に色分け
 社会調査の発展(20世紀前半)
 市場調査
 大量生産と大量消費の時代
 どの商品が、いくらで誰にどのくらいの量、売れそうか
 世論調査
 大衆社会(互いのことを良く知らない人同士の社会)
 政治的な意思決定。誰がどのようなことを考えているか。そのように考えている人は全体の何%か。

この授業(社会学総論社会調査編)の目的
 社会調査の意義や基本的事項について、社会調査の具体的事例の紹介を通して学ぶ
 理論と調査は、社会学の両輪
 実証的な学問である社会学は、理論をデータにもとづいて検証・発展させる


2時間目:社会調査とは何か2

この授業でとりあげる社会調査の具体的事例
 公式統計──デュルケム『自殺論』1897年
 フランスを中心にヨーロッパにおける自殺の公式統計をもちいて、地域ごとの自殺率とその地域の文化的特徴の関連を調べる
 社会踏査──ブース『ロンドンにおける人びとの生活と労働』1904年
 都市貧民の窮状を客観的に明らかにするために、一つの地域を精密に調べる
 貧困の操作的定義:「標準的な大きさの家族で週当たり18から21シリング」
 貧困の空間的な分布状態:ロンドン各地区の貧困状態を地図上に色分け
 ドキュメント分析──トマスとズナニエツキ『ヨーロッパとアメリカにおけるポーランド農民』1918-20年
 手紙、新聞記事、自伝、裁判記録などのドキュメントを使って、ポーランド農民の態度変容と社会変容を包括的に描くモノグラフ
 地域社会研究──リンド夫妻『ミドルタウン』1929年
 アメリカ中西部の人口36000人の小都市における住民の生活実態を多側面にわたって詳細に分析
 当時のアメリカ社会の平均像
 実験法──メイヨー『産業文明における人間問題』1933年
 ホーソン工場での実験にもとづいて人間関係論的アプローチを生み出す
 産業における人間の生理学的研究よりも人間関係の問題がより重要である
 産業における人間行動を規定するものは、金銭や物的作業条件だけではなく、むしろ感情的動物としての人間の持つ動機・満足などの真理、人間相互間の社会関係の作用などのほうが重要である。
 社会心理学的研究──アドルノ『権威主義的パーソナリティ』1950年
 権威主義的人間類型の生成を社会心理学的に解明
 権威主義:もっぱら権威に価値を認める主義。権威に対する自己卑下や盲目的服従、また、権威をもって他を圧迫する態度や行動としてあらわれる。(広辞苑6版)
 参与観察法──ルイス『貧困の文化』1959年
 メキシコ農村に暮らす一家族、メキシコシティのスラムに暮らす三家族、スラムから脱出した一家族の生活を描き、貧困な人びとに共通する生活様式「貧困の文化」が形成・継承される姿を浮き彫りにする
 参与観察法──ゴッフマン『アサイラム』1961年
 全制的施設に収容された人びとの施設内の世界を記述する
 全制的施設:外の世界から遮断されて、類似の境遇にある多くの人びとが、一定期間、閉鎖的・形式的・画一的に一括管理された生活を送る施設
 精神病院、刑務所、兵営、修道院など
 インタビュー法──ベッカー『アウトサイダーズ』1963年
 マリファナ使用者などのアウトサイダーたちの社会的世界を記述する
 インタビュー法──モラン『オルレアンのうわさ』1969年
 フランス中部の都市オルレアンで、女性誘拐のうわさが、どのように発生・伝搬・拡大・反撃・消滅したかについて、そのサイクルを具体的な姿で捉える
 うわさ:オルレアンの街の中心部で流行の先端をいく婦人服のブティックで、女性客が試着室に入ると、店の人間に薬物を注射され眠らされてしまう
 調査票調査──「社会階層と社会移動」全国調査(SSM調査)
 職業にもとづく階層と階層間の移動を軸に、人びとの意識や生活をあきらかにする
 「社会階層と社会移動全国調査」(Social Stratification and Social Mobility)の略称。1955年以来,10年間隔で実施
 調査票調査──日本版総合的社会調査(JGSS)
 日本社会および日本人の意識や行動の実態を把握。国際比較を視野(アメリカのGSSなど)。2次分析を推奨する開かれた調査。
 1999年、予備調査を実施、2000年、本調査を実施。偶数年に調査を実施(2年おき)


社会調査のプロセス
1. 調査企画
 その時代の課題に応える調査企画を立てる。調査の社会的意義は何か。
2. 調査設計
 調査企画を実行可能なかたちに設計する。調査の段取りを整える。
3. データ収集
 調査設計にもとづいてデータを収集する。
4. データ分析
 さまざまな手法をもちいてデータを分析する。
 理論やモデルの構築を図る。
5. 調査結果の公表
 調査の知見を多く人に知ってもらう。

 この授業で取りあげる12の調査事例について、上記の5つのプロセスがわかるように紹介していく予定。




社会調査へのアプローチ―論理と方法 (MINERVA TEXT LIBRARY)
ミネルヴァ書房
大谷 信介

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 社会調査へのアプローチ―論理と方法 (MINERVA TEXT LIBRARY) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


"社会学総論20110617(社会調査とは何か)" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント