富山病院看護学校社会学20110525(映画『カッコーの巣の上で』前半)

今回の授業から、しばらく精神障がいに関する話題を扱います。病気・障がいと社会の関係を考える上で、精神障がいの事例はとても示唆的だからです。病気や障がいの生物学的な事実は同じでも、時代とともに社会からの扱われ方は変遷していきます。今回の授業で話しましたが、日本社会では「治安維持 → 治療 → 治療と福祉」という大きな流れが見て取れます。このことは、「精神障がいとは何か」ということが社会との関係から規定されていることを示しています。

というわけで、授業では、1960年代アメリカの精神病院を舞台とする映画『カッコーの巣の上で』を2回に分けて観ていきます。これは1975年に公開された映画で、アカデミー賞を六つも取った話題作です。主演のジャック・ニコルソンは癖のある役者さんですが、名優の一人に数えられています。ニコルソンが演じる主人公マクマーフィを見ていると、一般常識とは逆に、「病院の規則や管理が、むしろ病気を生み出しているのではないか」という気になってきます。

古い映画のせいか、ストーリーの展開はのんびりしていて、前半はマクマーフィの影響を受けた病室の仲間たちがしだいに元気になっていき、ほのぼのとしています。しかし、後半は一転して緊迫したシーンが続き、衝撃のラストを迎えます。前回見せた『大病人』に比べると、ストーリーが追いづらいのですが、学生の皆さんには、「何とも言えぬ理不尽さ」をぜひ感じ取ってほしいと思っています。


講義ノートはこちら(MS Word, 24Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/20110525%E5%AF%8C%E5%B1%B1%E7%97%85%E9%99%A2%E7%9C%8B%E8%AD%B7.docx

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講義ノートテキスト版
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20110525富山病院看護
映画『カッコーの巣の上で』1

映画を見る目的
 精神障がいをめぐる社会の対応を考察する
 精神障がい者が地域社会で暮らす可能性を考察する


日本における精神障がい者のあつかわれ方の変遷(黒田 1995: 188-201)
 精神障がいに対する社会の対応は歴史的に変遷している。精神障がいは医療と社会の関係を考える上で良いテーマ
 全体の流れ
時代 戦前(明治・大正) 昭和 平成
目的 治安維持 治療 治療 +(福祉)
対応の主体 家族 病院 病院 +(地域社会)
法律 1900年 精神病者監護法
1919年 精神病院法 1950年 精神衛生法 1987年 精神保健法
1995年 精神保健福祉法
 歴史
 戦前(明治・大正)
 明治初期:1878(明治11)年:警視庁の布達による私宅監置の規定
 明治後期:1900(明治33)年:「精神病者監護法」
 家族による監護
 近代西洋医学を学んだ精神科医「呉秀三」(くれ・しゅうぞう)による批判。治療なき監禁。
 大正:1919(大正8)年:「精神病院法」
 国公立の精神病院による治療
 財政的裏付けがないため、公立精神病院の建設は遅々として進まず、私立の代用病院が増加
 精神病者監護法はそのまま継続
 戦後前期(昭和):1950(昭和25)年:「精神衛生法」
 国家や地方自治体の責任における病院での医療を基本とする
 私宅監置の廃止
 強制入院の制度化
 措置入院
 精神障がいのために「自身を傷つけ又は他に害を及ぼすおそれ」があると認めた場合、二人以上の精神衛生鑑定医の診察を経て知事の権限により強制入院
 同意入院:保護義務者による
 医療及び保護のために必要と認められる場合、保護義務者(後見人、配偶者、親権を行うもの及び扶養義務者)の同意による強制入院。保護義務者は、精神障がい者に対して自傷他害に至らないように監督し、医療を受けさせる義務を負う。
 私立精神病院の増設が重視された
 精神病院の人件費抑制が認められる(1958年厚生省事務次官通達)
 医師は3分の1、看護師は3分の2でよい
 1950年代に向精神薬(こうせいしんやく)が開発される
 「向精神薬による「化学的拘束」を受けた病院内での扱いやすい患者を生み出し、少ないスタッフと入院管理を助長し、病床拡張政策に寄与していくことにもなったのである」(黒田 1995: 198)
 昭和40年代:「治療なき強制収容所」批判
 精神病院での患者虐待事件が発覚
 岩手県N病院における抗てんかん薬の臨床実験による死亡
 大阪府Y病院の看護人による患者撲殺
 栃木県U病院における看護人による入院患者への暴力殺人(1984年)
 戦後後期(平成):1987(昭和62)年:「精神保健法」、1995(平成7)年:「精神保健福祉法」
 任意入院を原則とする
 社会復帰施設の規定



映画『カッコーの巣の上で』(原題:ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST)
 映画前半65分を見る
 1975年、アメリカ映画。本編133分
 ケン・キージーのベストセラー小説を映画化した作品。ゴールデン・グローブ賞6部門、アカデミー賞5部門(作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚色賞)を受賞。
 監督・出演
 監督:ミロス・フォアマン
 出演:ジャック・ニコルソン(R・P・マクマーフィ)、ルイーズ・フレッチャー(ラチェッド看護婦)、ウィリアム・レッドフィールド(ハーディング)、ダニー・デビート(マーティニ)
 あらすじ(VHSビデオのケースに記載された解説より)
 1963年9月のある日、オレゴン州立精神病院に一人の男が連れられてきた。ランドル・P・マクマーフィ。彼は刑務所の強制労働を逃れるために狂人を装っていた。しかし精神病院はもっと悲惨な状況にあった。絶対権限を持って君臨する婦長によって運営され、患者たちは無気力な人間にされていたのだ。さまざまな手段で病院側に反抗しようとするマクマーフィに、患者たちも心を少しずつ取り戻し始めた。そんな彼の行動に脅威を感じた病院は、電気ショック療法を開始するが、マクマーフィも脱走を計画し始める…。ケン・キージー原作のベストセラーを映像化。感動のラストシーンが印象的。


参考文献
 黒田浩一郎編, 1995, 『現代医療の社会学──日本の現状と課題』 世界思想社.




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