富山病院看護学校社会学20110413(社会学とは何か)

独立行政法人国立病院機構「富山病院附属看護学校」に、非常勤講師で社会学を教えに行ってきました。
1999年に富山大学に来てからお世話になっているので、13年目になります。
月日が経つのは、ほんとうに早いです。

今年度の初めての講義だったので、いささか疲れました。
学生に書いてもらった感想を読むと、社会学に興味を持ってくれたようで良かったです。


講義ノートはこちら(MS Word, 28Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/20110413%E5%AF%8C%E5%B1%B1%E7%97%85%E9%99%A2%E7%9C%8B%E8%AD%B7.docx



============
配付資料リッチテキスト版
============


20110413富山病院看護

社会学とは何か

社会科と社会学
 社会学は、(1)人びとが、どのような社会生活を営んでいるのか、(2)そこには、どのような規則性があるのか、の2点を明らかにする
 (1)は、記述のレベル。高校までの社会科は、この記述のレベルまでの話が多い。そのため、「社会科は暗記科目」という印象が残ってしまう。
 (2)は、説明のレベル。社会学では、(1)の記述のレベルでとどまらず、社会生活の規則性について考察し、説明する。


社会学の目的
 社会学は、「普段は意識していない社会の規則性(パターン)」について考える学問
 社会学のイメージ
 日本語と文法=社会生活と社会学
 文法を意識せずに日本語を話せる=社会学を知らずに社会生活は送れる
 日本語も、でたらめに使っているわけではない。規則性がある。すなわち、文法=社会生活もでたらめではない。規則性がある。それを明らかにするのが社会学
 文法を知っていたほうが、日本語の使い方に迷ったとき、解決の糸口がつかめる=社会生活でトラブルや困難にぶつかったとき、社会学を知っていた方が、解決の糸口がつかみやすい
 社会学は「社会についての暗黙知を形式知に変える学問」と言えるかもしれない
 暗黙知:経験や勘に基づく知識のことで、言葉などで表現が難しいもの
 実習で学ぶ
 形式知(言説知):言葉などで表現しやすい知識
 教科書(マニュアル)を通して講義で学ぶ


社会とは何か?──今日覚えて欲しいこと
 人間が一人一人バラバラだったときには、起こらなかったようなことが、複数の人間が集まると起こることがある。
 「一人一人がバラバラ」=個人の状態、「複数の人間が集まる」=社会の状態
 一人のときの行動と、周りに人がいるときの行動は違ってくる=人間は、個人の状態でいるときと、社会の状態でいるときでは、行動が異なる場合がある。
 心理学と社会学が違う点
 心理学=主に、個人の状態の人間を研究
 社会学=主に、社会の状態の人間を研究


キティ・ジェノヴィーズ事件(コリンズ 1992: 19-21; 森下ほか 1998: 121-2)
 1964年3月13日(金)午前3時20分頃ニューヨークで起きた殺人事件
 目撃者が多ければ多いほど、援助はされにくい
 事件の経過
 キティ・ジェノヴィーズという女性が、夜、団地を横切って歩いていたときに、男にナイフで刺される。
 ナイフで刺された彼女は、助けを求めて叫ぶ。
 団地の窓に明かりがともり、多くの顔を出したので、男は逃げ去る。後の調査によれば、目撃者の数は、38人
 しかし、誰も助けに来なかったし、警察にも電話をしなかった。
 ジェノヴィーズは、傷ついて倒れたままだった
 ナイフで彼女を刺した男は、誰も助けに来ないことを知ると、現場に戻ってきて、自分の顔を見たジェノヴィーズに最後のとどめを刺した
 新聞は、「都会の人間関係の冷たさ」「道徳心のなさ」と報道
 なぜ、ジェノヴィーズは、助からなかったのか
 誰もが「自分が何もしなくても、他の誰かが、何かするだろう」と思いこんでいた
 助けなかったのは、悪気があったわけではない
 例えば、ジェノヴィーズさんが、普段から嫌われ者だったというわけではない
 窓から、大勢の人が顔を出した
 彼らは、窓の下で起こっていることに気づいており、他の多くの人たちもそれに気づいていることを知っている。
 誰かが警察に電話していれば、今更、自分の出る幕ではないし、もし、一番に電話することになったら警察で証言しなくちゃならないし、面倒くさい
 もし目撃者が一人だったら
 後先考えずに、助けに行ったり、警察に連絡したりしたはず
 結論:目撃者が一人だったなら、助かったはずの被害者が、目撃者が複数だったため、助からなかった
 「全体責任は、無責任」
 医療の現場は、さまざまな専門職のチームプレー。「患者を救いたい」という熱意と責任感に満ちあふれた専門職の人びとが集まったとしても、「きっと誰かがやってくれたはず」と皆が思ってしまえば、「無責任」になりかねない
 自分一人くらいはいいだろうが、地球環境を破壊する(共有地の悲劇)
 フリーライダー問題


社会的知覚──M.シェリフによる「じょうご効果」の実験(井上・大村 1993: 13-4)
 「光点の自動運動現象」の揺れ幅を判定させる。2人または3人で実験を行うと、揺れ幅の判断値が、徐々に狭い範囲に収斂する。一人ずつ暗室に入って、揺れ幅を答える
 一人ずつ暗室に入って、揺れ幅を答える
 個人差はあるものの、それぞれが答える値は、それぞれかなり狭い範囲に収斂し安定する
 三人同時に暗室に入って、揺れ幅を答える
 最初は、かけ離れていた一人一人の判断値が、次第に、同じような値になっていく
 一人ずつ実験した場合と、3人同時に実験した場合の結果が異なるのは何故か?
 3人同時に実験室に入ったときは、1人が答えているとき、他の2人はその答えを聞いている
 結論:ごく単純な知覚的判断でさえ、一人一人バラバラのときと、複数の人間が集まったときでは、値が異なる
 応用例
 テレビショッピングなどで、「ワァー」とから、「欲しい」とか、観客が反応する。
 テレビのバラエティ番組の観客の笑い声や拍手


まとめ:社会と人間
 社会学における人間の捉え方
 社会的動物としての人間
 人間は、他の人びととともに社会生活を営み、精神的・物質的に社会生活に頼っており、そこから直接・間接にさまざまな影響を受ける
 キティ・ジェノヴィーズ事件=全体責任は、無責任
 社会とは何か
 社会=「人と人の集まり」+「人と人の関係」
 ただし、社会は、単純な個人の集まりではない
 人が集まったときに形成される人と人の関係が社会の本質
 喩え:水素+酸素→水
 医療の現場での人間の捉え方
 医療の現場では、人間を生物体として捉えがちになりやすい。つまり、関心が個人の内側に向きやすい。社会学は、それとは反対に、個人の外側の人間関係に関心をもつ
 社会の創発特性
 個人に還元されない社会独自の性質のこと
 「人間が一人一人バラバラだったときには、起こらなかったようなことが、複数の人間が集まると起こることがある」とは、この社会の創発特性を意味している
 例:「3人よれば文殊の知恵」
 上記の「人と人の関係」が、社会の創発特性を生みだす要因


 高山ブログ
http://r-takayama.at.webry.info/


参考文献
 森下伸也・君塚大学・宮本孝二, 1998, 『パラドックスの社会学[パワーアップ版]』 新曜社.
 コリンズ, 1992, 『脱常識の社会学──社会の読み方入門』 岩波書店.
 井上俊・大村英昭, 1993, 『[改訂版]社会学入門』 放送大学教育振興会.

脱常識の社会学―社会の読み方入門
岩波書店
ランドル コリンズ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 脱常識の社会学―社会の読み方入門 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


"富山病院看護学校社会学20110413(社会学とは何か)" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント