多様な教育機会確保法案2015年8月11日未定稿と2015年9月1日未定稿との比較

多様な教育機会確保法案(義務教育の段階に相当する普通教育の多様な機会の確保に関する法律案)の条文案について、2015年9月1日付けで「未定稿の最新版」がフリースクール全国ネットワークのホームページに掲載されています。このブログで検討してきた2015年8月11日版未定稿と9月1日未定稿について、新旧対照表を作成しましたので、ご利用ください。もっとも、2015年9月2日に、議員連盟の第3回合同総会が開催され、条文案について検討がおこなわれています(はせ日記9月2日)。新たな修正が加えられている可能性も高いので、ご利用の際はご注意ください。


2015年8月11日未定稿と2015年9月1日未定稿の新旧対照表
https://dl.dropboxusercontent.com/u/22647991/tayoho0811_0901.pdf

多様な教育機会確保法 条文案(2015.9.1公開)(フリースクール全国ネットワーク)
http://freeschoolnetwork.jp/p-proposal/1320

はせ日記9月2日
http://ameblo.jp/hase-hiroshi/entry-12068870726.html



主な変更点は、3点あるように思います。

(1)従来どおりに学校教育法のもとで不登校をしている子どもに対する学習支援が、新しく国と地方公共団体の努力義務となった(第10条第1項)

(2)個別学習計画の認定における学校教育法第21条の要件が緩和された(第12条第3項第4号)

(3)施行後3年以内の見直し規定が新たに入った(附則第3項)




<(1)従来どおりに学校教育法のもとで不登校をしている子どもに対する学習支援が、新しく国と地方公共団体の努力義務となった(第10条第1項)>

新しく加わったのは、下記の条文です。

「第十条 国及び地方公共団体は、第七条に規定する特別の事情を有するため就学困難な学齢生徒(第十二条第一項の認定に係る個別学習計画に従った学習活動を行う者を除く。)及び義務教育の段階に相当する普通教育を十分に受けていない者であって学齢期を経過したもの(第十九条に規定する夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供を受けている者を除く。)が学校教育法に規定する中学校を卒業した者と同等以上の学力の修得ができるよう、教材の提供(通信の方法によるものを含む。)その他のこれらの者の個別の状況に応じた学習の支援のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」(9月1日版)

回りくどく書かれていますが、要は「一条校に在籍している不登校の子どもにICT(インターネット等)を使った学習支援をする」ということのようです。


2015年2月から文科省で開催されている「不登校に関する調査研究協力者会議」は、2015年9月中に「中間報告」を文科省ホームページ等で公表する予定になっています。2015年8月26日の第8回会議で配布・検討された「不登校児童生徒への支援に関する中間報告<案>──一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない支援の推進」には、「ICT」という単語が9回ほど登場しています。例えば、14頁には、

「ICTを活用した学習支援としては、不登校児童生徒が、家庭等でICTを活用した学習を行う際、それを学校における出席扱いとすることが認められている。一方で、その制度の活用は十分進んでいるとは言えず、その原因は、学校の教員が十分関われない家庭の学習を学校として出席扱いすること等に困難があること等が考えられる。この観点からは、例えば、いわゆるMOOCのような仕組みを活用して、学校関係者等が不登校児童生徒の学習支援につながる内容を発信することが考えられる。また、義務教育段階であっても、不登校児童生徒について、学校と家庭や教育支援センターとの聞をICTの活用により同時に結び、家庭や教育支援センターで学ぶ児童生徒に対する授業を行うことは、現行制度の下でも認められると考えられる。このような現行制度内で行うことができるICTを活用した取組については、国の通知の発出等によりそれを明確化することが考えられるほか、現場のニーズを施策に的確に生かしていくための調査研究等を行っていくことが考えられる。」(中間報告<案>、14頁、2015年8月26日)

という詳しい記述があります。第10条の修正は、こうした不登校に関する調査研究協力者会議の議論が反映しているものと思われます。不登校に関する調査研究協力者会議の第7回(6月26日)と第8回(8月26日)を傍聴しましたが、多様な教育機会確保法について会議で話題になった記憶がないので、この第10条の修正は唐突な印象を受けます。

不登校に関する調査研究協力者会議
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/108/



<(2)個別学習計画の認定における学校教育法第21条の要件が緩和された(第12条第3項第4号)>

第12条第3項第4号は、8月11日版では、

「四 前号に定めるもののほか、当該学齢児童又は学齢生徒の発達段階及び特性に応じつつ学校教育法第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう定められていることその他の文部科学省令で定める基準に適合するものであること。」(8月11日版)

これが、9月1日版では、以下のように修正されています。

「四 前号に定めるもののほか、学校教育法第二十一条各号に掲げる目標を踏まえ、当該学齢児童又は学齢生徒の発達段階及び特性に応じて定められていることその他の文部科学省令で定める基準に適合するものであること。」(9月1日版)

この第12条第3項第4号は、「学校教育法第21条」と「子どもの発達段階および特性」という相反するかもしれない要素の両立を求めています。8月11日版では「学校教育法第21条」が「主」のように読めましたが、9月1日版では「子どもの発達段階および特性」が「主」である印象を受けます。個別学習計画が子どもや保護者を追い詰めるのではないかという批判が多数出されていますが、そうした批判を考慮した修正のように思えます。



<(3)施行後3年以内の見直し規定が新たに入った(附則第3項)>

「3 政府は、この法律の施行後三年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」(9月1日版)

この条文の追加は、多様な教育機会確保法案に対してさまざな異論が出されていることの反映だと思われます。


この法案の取りまとめをしている馳浩議員の9月2日付けの公式ブログ(URLは上記参照)には、

「15時00分、フリースクール議連と夜間中学議連の合同総会。立法チームで取りまとめた座長試案を報告、審査。会長一任をいただく。と言っても次は各党手続き。各党手続きの報告を、次回総会にお持ち頂き、最終案を確定し、提出会派のとりまとめに入ることとする。」(はせ日記9月2日)

と書かれています。この法案は今国会での成立が目指されていますが、まだ紆余曲折があるように感じます。



<高山龍太郎のブログより>

多様な教育機会確保法案に関する新聞社説等
http://r-takayama.at.webry.info/201509/article_1.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「個別学習計画の支援・勧告・修了」と「就学義務の履行」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_6.html

多様な教育機会確保法の条文案(2015年8月11日付け未定稿)における「個別学習計画の認定と修正」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_5.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「基本指針」と「多様な教育機会の確保に関する施策」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_4.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「国と地方公共団体の責務」と「財政上の措置等」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_3.html

多様な教育機会確保法の条文案(2015年8月11日付け未定稿)における「目的」と「基本理念」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_2.html

多様な教育機会確保法における財政上の措置の必要性
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_1.html

多様な学び保障法を実現する会総会・公開イベント「多様な教育機会確保法を知ろう」に参加して
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_5.html

教育支援センター実態調査にみる地域格差──第7回不登校に関する調査研究協力者会議①
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_4.html

多様な学び保障法を実現する会「多様な教育機会確保法を知ろう」(2015年7月26日、東京都新宿区)
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_3.html

多様な教育機会確保法案は就学校指定制度の拡大である
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_1.html

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会に参加して
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_6.html

「多様な教育機会確保法(仮称)案」における不登校支援の仕組み
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_5.html

「多様な教育機会確保法(仮称)案」の概要
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_4.html

フリースクール等を義務教育として認めてもよいと考える保護者は63.2%──義務教育に関する意識調査
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_3.html

黒柳徹子著『窓ぎわのトットちゃん』とフリースクール
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_2.html

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会2015年6月16日東京都千代田区
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_1.html

不登校に関する調査研究協力者会議「不登校児童生徒への支援に関する中間報告<たたき台>」
http://r-takayama.at.webry.info/201505/article_1.html



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