多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「基本指針」と「多様な教育機会の確保に関する施策」

前々回・前回のブログ記事で、多様な教育機会確保法(義務教育の段階に相当する普通教育の多様な機会の確保に関する法律)の条文案(2015年8月11日付け未定稿)に示された「目的」(第1条)、「基本理念」(第2条)、「国と地方公共団体の責務」(第3条・4条)、「財政上の措置等」(第5条)について見てきました。今回のブログ記事では、「基本方針」(第6条)と「多様な教育機会の確保に関する施策」(第7~11条)について見ていきたいと思います。

多様な教育機会確保法の条文案(2015年8月11日付け未定稿)における「目的」と「基本理念」(高山龍太郎のブログ)
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_2.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「国と地方公共団体の責務」と「財政上の措置等」(高山龍太郎のブログ)
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_3.html



なお、条文案(未定稿)については、下記のサイトで見ることができます。

多様な教育機会保障(仮称)法、未定稿条文案が発表(不登校新聞)
http://futoko.publishers.fm/article/9058/

条文(未定稿)(ますます不登校の子どもが追いつめられる!? 9・9「多様な教育機会確保法案」緊急大検討会)
http://150909.jimdo.com/%E6%9D%A1%E6%96%87-%E6%9C%AA%E5%AE%9A%E7%A8%BF/


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多様な教育機会確保法

第六条 文部科学大臣は、多様な教育機会の確保に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(以下この条及び第十二条第三項第三号において「基本指針」という。)を定めるものとする。
2 基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 多様な教育機会の確保に関する基本的事項
二 第十二条第一項に規定する個別学習計画の認定及び第十四条に規定する学習活動に対する支援等に関する事項
三 夜間その他特別な時間において授業を行う学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部をいう。以下同じ。)における就学の機会の提供その他の必要な措置に関する事項
四 その他多様な教育機会の確保のための施策の総合的な推進のために必要な事項
3 文部科学大臣は、基本指針の案を作成し、又は基本指針を変更しようとするときは、あらかじめ、地方公共団体及び多様な教育機会の確保に資する活動を行う民間の団体その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
4 文部科学大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (調査研究等)
第七条 国は、義務教育の段階に相当する普通教育を十分に受けていない者の実態の把握に努めるとともに、相当の期間学校を欠席していると認められる学齢児童又は学齢生徒(学校教育法第十八条に規定する学齢児童又は学齢生徒をいう。以下同じ。)であって文部科学省令で定める特別の事情を有するため就学困難なものの学習活動に対する支援の方法及び学齢期を経過した者(その者の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから満十五歳に達した日の属する学年の終わりまでの期間を経過した者をいう。第十九条及び第二十条第二項第三号において同じ。)であって就学の機会の提供を希望するものに対する教育の内容に関する調査研究並びに情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。

 (国民の理解の増進)
第八条 国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、多様な教育機会の確保に関する国民の理解を深めるよう必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (人材の確保等)
第九条 国及び地方公共団体は、多様な教育機会の確保を専門的知識に基づき適切に行うことができるよう、多様な教育機会の確保に係る職務に携わる者の人材の確保及び資質の向上を図るため、研修等必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (教育に係る環境の整備)
第十条 国及び地方公共団体は、適切な教材等の提供及び学校その他の教育施設の提供その他の多様な教育機会の確保を図るために必要な環境の整備を促進するよう努めるものとする。

 (相談体制の整備等)
第十一条 国及び地方公共団体は、義務教育の段階に相当する普通教育を十分に受けていない者及びその家族からの各種の相談に総合的に応ずることができるようにするため、関係省庁相互間その他関係機関、学校及び民間団体の間の連携の強化その他必要な体制の整備に努めるものとする。

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第6条(基本指針)では、文部科学大臣が基本指針を定めることになっています。2015年6月16日開催の「多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会」における馳議員の説明から考えると、文部科学大臣が中央教育審議会(中教審)に諮問して、その答申にもとづいて基本指針を定めることになるだろうと思います。したがって、人びとの関心が集まる「個別学習計画の認定」の具体的な基準は、今後、中教審で議論されることになるのだと思います。


また、付則には、「基本指針」について、次のように定められています。

「(経過措置)
3 文部科学大臣は、この法律の施行前においても、第六条第一項から第三項までの規定の例により、多様な教育機会の確保に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針を定めることができる。
(略)
5 附則第三項の規定により定められた多様な教育機会の確保に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針は、この法律の施行の日において第六条第一項及び第二項の規定により定められた基本指針とみなす。」

つまり、法案成立後は、2017年4月1日予定の施行日を待たずに、基本指針の策定作業が始まり、施行日には、基本指針が策定済みだということです。したがって、今国会で法案が成立したら、約1年半で、具体的な制度設計を終えるというスケジュールになっているのだと思われます。

中央教育審議会について(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gaiyou/010201.htm

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会・記録(フリースクール全国ネットワーク)
http://freeschoolnetwork.jp/wptest/wp-content/uploads/2015/06/rewrite.pdf



第7条から第11条までは、多様な教育機会の確保に関する施策を定めており、調査研究等(第7条)、国民の理解の増進(第8条)、人材の確保等(第9条)、教育に係る環境の整備(第10条)、相談体制の整備等(第11条)が列挙されています。これらの実施は、一部を除いて「努力義務」になっています。

「行うものとする」となっている施策は、第7条のうち「就学困難者への学習支援方法および年齢超過者への教育内容に関する調査研究、ならびに、情報の収集・整理・分析・提供」のみです。これらは、個別学習計画を作成する上で必須のものだと思われるので、「行うものとする」という言い方になったのでしょう。ちなみに、これらの施策を実施するのは、地方公共団体ではなく国です。地域の学習資源を把握しておくことは、個別学習計画を考えるのに重要です。地元の情報は、国よりも市町村のほうが把握しやすいと思うので、第7条の主語には「地方公共団体」もあって良いように思います。


ところで、法案の第7条から第11条までに挙げられた施策以外で、他に必要なものはないでしょうか。

前回のブログ記事で、「フリースクールの設置義務」を話題にしました。

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「国と地方公共団体の責務」と「財政上の措置等」(高山龍太郎のブログ)
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_3.html


こうした設置義務を多様な教育機会確保法案に盛り込むのであれば、この「第三章 多様な教育機会の確保に関する施策」になるように思います。

例えば、学校教育法の「第三十八条 市町村は、その区域内にある学齢児童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。」という小学校の設置義務の規定にならって、

「第○条 市町村は、第2条の基本理念にもとづいて、多様な教育機会を確保する場を設けなければならない。」

のような条文を付け加えられないものでしょうか。


一口に市町村といっても、人口規模がまちまちなので、人口の少ない村などでは、一律な設置義務は難しいかもしれません。しかし、そうした事態を想定して、学校教育法では、組合立の学校を認めています。同様に、いくつかの市町村が共同で組合を設立し、そこに多様な教育機会を確保する場の運営を委託することは可能だと思います。

日本一長い校名の由来(高知県宿毛市愛媛県南宇和郡愛南町篠山小中学校組合立篠山小・中学校)
http://sasayama-e.esnet.ed.jp/modules/syokai/index.php?content_id=4


あるいは、民間団体に事業を委託して、市町村が予算を出して民間団体が運営する「公設民営方式」による設置もありえるだろうと思います。川崎市には「川崎市子ども夢パーク」というすばらしい公設民営の施設があります。

川崎市子ども夢パーク
http://www.yumepark.net/

NPO法人フリースペースたまりば(川崎市子ども夢パークの運営を委託されている)
http://www.tamariba.org/


また、学校(一条校)に通う子どもには、「健康診断」(学校教育法第12条)や「就学援助」(学校教育法第19条)が受けられることになっています。さらに、学校に通う子どもに認められている「無償の教科書」「給食」「通学定期」「学割」「保険」などについても、同等の待遇が認められて良いように思います。このうち「無償の教科書」については、第10条が該当するように見えます。

多様な教育機会確保法は「学校教育法の特例」(第17条の見出し)という位置づけになるようなので、もしかすると、特例として多様な教育機会確保法に書かれたこと以外は、自動的に、学校と同じ規定が適用されるのかもしれません。もしそうならば、あえて条文に書かなくても良いのかもしれません。しかし、明記されていないと、役所がなかなか対応してくれないようにも思います。うまい条文が思いつきませんが、例えば、

「第○条 認定個別学習計画のもとで学ぶ児童生徒は、学校で学ぶ児童生徒と同等の待遇が認められる。」

のような包括的な規定があると、個別学習計画にもとづいて義務教育を実施する保護者を行政がさまざまなかたちで支援できるように思います。



<高山龍太郎のブログより>

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「個別学習計画の支援・勧告・修了」と「就学義務の履行」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_6.html

多様な教育機会確保法の条文案(2015年8月11日付け未定稿)における「個別学習計画の認定と修正」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_5.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「基本指針」と「多様な教育機会の確保に関する施策」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_4.html

多様な教育機会確保法の条文案(未定稿)における「国と地方公共団体の責務」と「財政上の措置等」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_3.html

多様な教育機会確保法の条文案(2015年8月11日付け未定稿)における「目的」と「基本理念」
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_2.html

多様な教育機会確保法における財政上の措置の必要性
http://r-takayama.at.webry.info/201508/article_1.html

多様な学び保障法を実現する会総会・公開イベント「多様な教育機会確保法を知ろう」に参加して
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_5.html

教育支援センター実態調査にみる地域格差──第7回不登校に関する調査研究協力者会議①
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_4.html

多様な学び保障法を実現する会「多様な教育機会確保法を知ろう」(2015年7月26日、東京都新宿区)
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_3.html

多様な教育機会確保法案は就学校指定制度の拡大である
http://r-takayama.at.webry.info/201507/article_1.html

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会に参加して
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_6.html

「多様な教育機会確保法(仮称)案」における不登校支援の仕組み
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_5.html

「多様な教育機会確保法(仮称)案」の概要
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_4.html

フリースクール等を義務教育として認めてもよいと考える保護者は63.2%──義務教育に関する意識調査
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_3.html

黒柳徹子著『窓ぎわのトットちゃん』とフリースクール
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_2.html

多様な教育機会確保法(仮称)制定を目指すフリースクール等院内集会2015年6月16日東京都千代田区
http://r-takayama.at.webry.info/201506/article_1.html

不登校に関する調査研究協力者会議「不登校児童生徒への支援に関する中間報告<たたき台>」
http://r-takayama.at.webry.info/201505/article_1.html







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