村落的環境から都市的環境への変化にともなう生活様式の変化──地域社会学I2012年10月19日

10月19日の授業では、ユイのような伝統的な村落で見られる相互扶助の人間関係が成立する条件を考えました。ユイのような人間関係が成り立つには、そこに住む人びとが同じようなライフスタイルをもち、何世代にわたってそこに住み続けることが必要です。すなわち、人口の同質性と定住性という村落的環境がなければ、成り立たない生活様式なのです。

近代化(市民革命、産業革命、人口爆発、交通・通信手段などの発達)によって人びとの移動性が増大し、都市的環境が成立します。それは、ライフスタイルの異なる人が狭い空間にひしめき合って暮らしている環境であり、その隣に住む人も気がつくとどこかに引っ越しているような環境です。すなわち、人口の異質性と移動性を特徴とする環境であり、ユイのような人間関係は成り立ちません。

このような都市的環境で生活に必要なものを手に入れようと思えば、質的に異なるものを媒介しその都度決済が完了する仕組みが必要になります。貨幣や市場というシステムがそれに該当します。このようなシステムによって間接的につながる人間関係は、ユイにみられる義理や人情の人間関係とは異なって、基本的にビジネスライクなものにならざるをえないでしょう。

講義ノートはこちら(MS Word, 25Kb)
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講義ノートテキスト版
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20121019地域社会学I(ユイの崩壊)

村落的環境から都市的環境への変化にともなう
生活様式の変化
──ユイの崩壊を事例に──

授業のねらい
 先週視聴したNHKスペシャル「80年ぶりの大屋根ふき──白川郷『結』復活の記録」(50分)(2001年5月19日放送)を題材に、村落的環境における生活様式から都市的環境における生活様式への変化を理解する。
 二つの家族と生活様式
 長瀬家──村落的環境における生活様式を象徴
 第一次的関係を通した生活資源の獲得
 義理と人情
 池尾家──都市的環境における生活様式を象徴
 第二次的関係を通した生活資源の獲得
 貨幣と市場


なぜ「ユイ」は成り立たなくなったのか
なぜ、人間は、社会を形成するのか
 自分一人ではまかなえない生活資源を獲得するため
 人間は一人では、自分の生活に必要なもの(生活資源)すべてをまかなえない
 その不足分をまかなうために、複数の人間と関係をもたざるを得ない → 社会の成立
 不足分のまかない方にパターンがある = 社会のあり方にもパターンがある
 「ユイ」は、そのまかない方の一パターン
 合掌造りの屋根を維持するのに、業者に頼んで3000万円払うか(池尾家)、それとも、ユイにお願いするか(長瀬家)
 長瀬家:ユイ(義理と人情)による生活資源の獲得
 池尾家:貨幣と市場による生活資源の獲得
 社会が存続する条件=「互酬性」(ごしゅうせい、give & take)
 与えたものと受け取ったものが等しくなくてはならない
 誰かが与えっぱなしだったり、受け取りっぱなしだったりすると、人間関係が破綻する
 与えたものと受け取ったものが、必ずしも同じものでなくてもよい

「ユイ」が成り立つ条件=人口の同質性と定住性
 同質性:村に住むみんなが合掌の家をもっている
 同じもの(行為)によって互酬性が成り立つ
 定住性:村に住むみんなが村にずっと住み続ける
 長い期間を通して互酬性が成り立つ。
 ビデオのシーン
 長瀬家の屋根ふきは、80年ぶり

都市的環境の成立にともなう「ユイ」の崩壊
 「ユイ」が崩壊する条件=都市的環境の成立
 近代化(市民革命、産業革命、人口爆発、交通・通信手段などの発達)によって人口の移動性が増大した → 都市的環境の成立 → 人びとの同質性と定住性の崩壊 → ユイの崩壊
 都市的環境
 さまざまな場所からさまざまな文化をもった大量の人びとが都市の狭い空間にやってきた結果、ライフスタイルの異なる人が隣り合って暮らす環境が生まれる。さらに、隣に住む人が、気がつくとどこかに引っ越し、いつの間にか、違う人が隣で暮らしているような移動性の激しい環境。
 同質性の崩壊
 別の場所で生まれライフスタイルの違う人が隣り合って住む
 例:茅葺き屋根とトタン屋根
 ビデオのシーン
 結願いのシーン:トタン屋根の家の人「20年くらい前は、しょっちゅう頼まれたんですけど。ここ10年くらい前からは、トタン屋根の家にはほとんど頼まれないことが多いですね」
 このトタン屋根の人は、話している言葉から推察すると、白川郷生まれの人ではない。
 定住性の崩壊
 一つの場所に留まる時間が短くなる
 長い間、村に留まり、自分の屋根ふきを手伝ってくれる可能性があるから、他人の屋根ふきを手伝う
 ビデオのシーン
 長瀬家の長男の善治郎さんも、高校は、白川郷から出ていた。そのまま、就職、結婚すれば、白川郷に戻ってくることもなかっただろう。

都市的環境における「ユイ」に代わる生活資源の獲得法の創出=「市場と貨幣」
 短い期間のうちに違うものの交換で互酬性が成り立つ仕組みの必要性
 ユイによる生活資源の獲得に代わって、貨幣と市場という仕組みが中心になる
 貨幣と市場という仕組みは、質が違い比較不可能なものを、価格という共通の尺度に置き換え、交換可能にする(同質性の崩壊を乗り越える)
 サービスと貨幣の交換は、その場で、非常に短期間に行われる(定住性の崩壊を乗り越える)。

まとめ
 村落的環境
 人と人が直接的にかかわりあって生活資源を獲得する生活様式が発達する
 第一次的関係、ゲマインシャフト、コミュニティ
 都市的環境
 人と人がシステム(貨幣と市場など)を介して間接的にかかわりあって生活資源を獲得する生活様式が発達する
 第二次的関係、ゲゼルシャフト、アソシエーション


参考文献
 倉沢進, 2002, 『コミュニティ論』 放送大学教育振興会.



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