実査とデータ分析──国際社会学I2012年6月26日

6月26日の授業の前半は、回答者から回答を実際に集める実査の方法について説明しました。面接、留置、郵送、電話、集合の5つの方法がありますが、それぞれ一長一短があり、調査の目的や予算などを勘案しながら適切な方法を選ぶ必要があります。後半は、回答済の調査票をコンピュータに入力し、単純集計やクロス集計をする手順について話しました。エクセルの「ピボットテーブル」を使った集計方法を実演しました。データ入力の型さえしっかりしておけば、集計作業はピボットテーブルを使って非常に手軽におこなうことができます。調査票調査の話は、これで終了です。次回の授業からは、質的調査による国際調査についてふれていきます。


講義ノートはこちら(MS Word, 33Kb)
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講義ノートテキスト版
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20120626国際社会学I(実査とデータ分析)
実査とデータ分析

調査票調査の方法(調査モード)(メイ 2005; 大谷他 2005)
 回答者に調査票の質問に回答してもらう方法には5つの方法がある。それぞれ一長一短があるので、調査目的や予算などにおうじて適切な方法を選ぶ必要がある。
 国同士の比較をするには、同じ方法がとられていることが望ましい。しかし、国際比較調査の方法をみると、各国でさまざまな方法がとられている。したがって、各方法の特徴とデータへの影響などを理解しておくことが大事である。
 ISSP2005の方法の内訳(33カ国)(西・荒牧 2009: 29)
 郵送8、面前記入2、面接19、留置1、郵送+電話1、面接+留置1、配布郵送回収1

面接調査
 調査員が被調査者を個別に訪問し、対面しながら質問を投げかけて回答を引き出し、その内容を調査員が調査票に記入していく方法。
 長所
 長い時間がかかる複雑な質問と回答が可能
 回答者の疑問などにその場で答えられる
 回収率が高い
 短所
 費用が高い
 調査の進行が遅い
 面接調査における調査員
 調査員の役割
 調査の意義を伝え、回答者の協力を引き出す
 回答者とラポールを保って、最後まで回答してもらう
 マニュアルに沿った標準化された方法で、明快・簡潔に質問し、回答者の回答を注意深く記録する
 調査員の存在は、諸刃の刃
 利点:複雑な質問と回答ができる
 欠点:質問の仕方にバラツキが生じる(回答者への「刺激の等しさ」が保障できない=標準化の問題)

留置調査法
 調査員が調査対象者に調査票を直接手渡すなどして配布した上で、一定期間(おおむね一週間以内)の間に記入してもらったものを、調査員が後日再度訪問して回収する方法。
 長所
 調査員が調査のお願いを直接するので、回収率は比較的良い
 回収時に、回答者の誤記入などを訂正できる
 回答者自身が回答を記入するため、じっくり考える時間があり、プライベートな質問もしやすい
 短所
 調査票の配布と回収で最低2度訪問する必要があるため、時間とお金がかかる。

郵送調査法
 調査への協力依頼と調査票の配布及び回収を郵便によっておこなう方法。
 長所
 費用が安い
 匿名性が高い
 回答をじっくり考える時間がある
 調査員の違いで生じる偏りがない
 地理的に広い範囲を調査できる
 短所
 比較的単純な質問紙しかできない
 回答者の解釈や回答の仕方を調査者がコントロールできない
 探りを入れる質問(プルーブ)ができない
 質問紙に答える人をコントロールできない
 回答率は低い。サンプルの最終的な偏りが確認できない

電話調査
 調査対象者に電話をかけて質問し、回答結果を調査員が記録する。
 長所
 費用が安い
 迅速に行える
 調査員が訪問するよりも、電話のほうが、回答者にとって気楽
 回答率が高くなるかもしれない
 調査員の業務を管理しやすい
 短所
 詳しい質問がしにくい
 回答者(サンプル)に偏りが出やすい
 電話帳への記載を断る人も多い
 回答をして欲しい人に電話がつながらないことも多い
 電話の所有率には、階級の違いがある
 回答を中断する回答者が増える

集合調査
 対象者に一ケ所に集まってもらい、その場で調査票を配布し、記入してもらってから回収する方法。
 長所
 調査に参加さえしてくれれば、回収率はかなり高い
 曖昧な点などについて、回答者が調査者に質問できる
 費用が安く、迅速におこなえる
 短所
 実施できる機会が限られている(職場や学校など)
 全国的な世論調査などでは不可能

調査方法のメリット・デメリットを考える基準
 回答の信頼性
 被調査者本人が調査票を記入したか(身代わり回答をしていないか)、回答が周囲の人物の示唆を受けていないかという回答の信頼性の基準
 回答の量的質的制約
 どの程度(量および深さ)の質問項目を調査することができるかという基準
 調査員の影響
 被調査者に対して調査員があたえる影響に関する基準(調査員の存在が回答に悪影響をあたえてしまう場合と、調査員がいることによって質問内容を説明したりチェックできたりするという2側面がある)
 コスト(人的・金銭的・時間的)の基準
 回収率の基準

面接調査 留置調査 郵送調査 電話調査 集合調査
調査票の記入 調査員 回答者 回答者 調査員 回答者
回答内容の信頼性 大変高い やや高い 低い 高い 高い
回答の量的質的制約 最も少ない 多い 多い 最も多い 多い
調査員の影響 多い 少ない ない 多い 少ない
調査員による点検 可 ある程度可 不可 可 不可
回収率 60~70% 60%程度 20~30% 40~60% ほぼ100%
コスト 大変高い 高い 大変低い 低い 大変低い

JGSS2006(EASS2006)の実施の方法(大阪商業大学JGSS研究センター 2012)
 2006年10月~12月社団法人 中央調査社に委託した。
 JGSSでは調査の一部を面接調査で行い、残りの部分を留置調査で行っているが、今回の調査では、内容の異なる2種類の留置調査票(A票とB票)を用いている。
 A票には主に継続的な設問と時事的な設問が含まれ、B票には主にEASSモジュールの設問が含まれている。A票とB票はおよそ半数ずつランダムに配布している。
 面接調査と留置調査の実施順序は、対象者の都合や希望を考慮し、調査員の状況判断に任せた。 調査員には、調査の実施順序を記録させた。
 回収率は59.8%


データ分析の下準備(大谷他 2005)
 調査票のエディティング
 エディティングとは、回答の点検や修正のこと
 記入漏れのチェック(無回答と非該当)、誤記入のチェック(指定外の回答=無回答扱い)、有効票(無効票=誠意の感じられない回答)の確定など。
 回答のコーディング
 回答のコーディングとは、回答を数字に置き換える作業のこと
 原則として選択肢の番号を回答コードにする
 自由回答の場合は、記入された各回答を分類し、分類したグループごとに番号を割り当てる
 データのインプット
 調査票一票分の回答を一行としてコーディングシート(表計算の形式)に転記
 半角数字で入力
 所定のセルにコード(数値)だけ入力
 エクセル形式のファイルとして保存
 データのクリーニング
 すべての質問について度数分布表(単純集計表)を作成
 入力ミスや論理的矛盾をチェック


データの分析(大谷他 2005)
単純集計
 調査票の各質問項目について、度数と相対度数(%)を算出する
 表番号をつける(表1、表2など)
 表の内容を具体的に表すタイトルをつける
 数値の単位をつける
 無回答も数える
 単純集計結果の吟味
 まず、すべての質問について単純集計をおこない、個々の質問への回答傾向を把握し、全体のイメージを作る。
 性別や年齢など回答者の属性は国勢調査データなどと比較して、偏りがないか確認
 単純集計の結果は、もっとも加工度の低いデータであるがゆえに、もっとも基礎的なデータともいえる。分析の時は、単純集計結果を常に参照する

クロス集計
 複数の質問項目間の関連を示すことができる
 特に、属性項目と意識や態度項目との関連を調べるとよい。
 属性項目とは、年齢、性別、学歴、職業など回答者の特性を表す質問項目のこと。
 行パーセントを算出(横に行で足し算すると100%)
 表側(ひょうそく、行)と表頭(ひょうとう、列)
 表側に独立変数、表頭に従属変数を配置

単純集計やクロス集計おこなうパソコン・ソフト
 Microsoft Excel
 ピボットテーブルという集計機能を使う
 IBM SPSS
 調査票調査の分析に適した専用ソフト
 十数万円する
 富山大学総合情報基盤センターが管理している計算機室で使用可能(総合情報基盤センターや経済学部4階計算機室など)

Excelのピボットテーブルを使った集計(加藤・石村 2003)
 ワークシートに「回答者一人一行」という形式でデータを入力
 データが入力されている任意のセルをクリック
 「挿入」タブの「ピボットテーブル」をクリック
 新しいワークシートに、ピボットテーブルが表れる
 右側の「フィールドのリスト」に表示された質問項目から、ドラッグ&ドロップで投入する


成績評価
 レポート
 課題:授業の内容をふまえて、国際調査の困難と可能性について述べなさい
 字数:3000~4000字
 A4の紙を使用
 〆切:8月8日(水)12時
 経済学部教務係のレポート提出ボックス


参考文献
 西久美子・荒牧央, 2009, 「仕事の満足度が低い日本人──ISSP国際比較調査「職業意識」から」『放送研究と調査』(日本放送出版協会) 59(6): 18-31.
 加藤千恵子・石村貞夫, 2003, 『Excelでやさしく学ぶアンケート処理』東京図書.
 大阪商業大学JGSS研究センター, 2012, 「JGSS-2006「第6回生活と意識についての国際比較調査」の調査概要」(http://jgss.daishodai.ac.jp/surveys/sur_jgss2006.html , 2012.06.26閲覧)
 メイ, T, 2005,『社会調査の考え方──論点と方法』世界思想社.
 大谷信介他, 2005, 『社会調査へのアプローチ──論理と方法[第2版]』 ミネルヴァ書房.




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