調査票の作成1(質問文)──国際社会学I2012年5月29日

すっかり遅くなってしまいましたが、5月29日の国際社会学Iの講義ノートをアップします。もう1ヶ月あまり経ってしまいました。すみません。

この日の授業では、主に、大谷信介他『社会調査へのアプローチ』にもとづいて、回答者が誤解しにくい「質問文」のつくり方について話をしました。調査票調査は、「紙に印刷された質問文にもとづいてやりとりをする」という日常ではあまり経験しないコミュニケーションなので、独特のノウハウがあります。この『社会調査へのアプローチ』はそのあたりのことを丁寧に書いてあるので、初学者にはお勧めの一冊です。また、妥当性や信頼性の話は、バビー『社会調査法1』の記述がわかりやすいです。


講義ノートはこちら(MS Word, 104Kb)
https://dl.dropbox.com/u/22647991/20120529%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6I%EF%BC%88%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%A5%A8%E3%81%AE%E4%BD%9C%E6%88%901%E2%94%80%E2%94%80%E8%B3%AA%E5%95%8F%E6%96%87%EF%BC%89.docx

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講義ノートテキスト版
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20120529国際社会学I
調査票の作成1──質問文

信頼性
 信頼性とは、同一の対象に対して同一の手法で測定を行えば、同一の測定結果が得られること
 信頼性の低い例
 2台の体重計を使って同じ人の体重を量った。1台目の体重計では70㎏だったが、2台目の体重計では75㎏だった。
 この2台の体重計を使って100人の体重を量った時、その100人の体重の平均値は信頼できない。
 調査票調査では、この体重計にあたるものが、調査票(質問文と回答選択肢)である。

妥当性と信頼性の図(バビー 2003: 143)

 「図5-2は、妥当性と信頼性の違いを図にしたものである。図では、測定をダーツで的の中心に向かって繰り返し撃つことに例えている。どこに当たるにせよ、一貫して同じ場所に当たるかどうかが信頼性である。他方、妥当性は、的の中心に近いところに当たるかどうかの問題である。」(バビー 2003: 143)


調査票の作成のポイント
 物理的な制約のあるなかで、できるだけ妥当性と信頼性の高いものにする。
 物理的制約:質問の量や内容は、回答者に過大な負担をかけていないか
 妥当性:仮説の操作化(変数化)が妥当か
 信頼性:誤解の余地のない質問文と回答選択肢になっているか


質問のタイプ(メイ 2005: 145-7)
 分類のための質問
 回答者の「属性」をたずねる質問
 例:「あなたの性別を教えてください」
 フェイスシート情報:年齢、収入、居住形態など
 これらの変数は、分析の際に、もっとも基本的な説明変数となる
 信頼性と妥当性は、さほど問題にならない
 事実についての質問
 回答者が実際におこなっている行動などの「客観的なことがら」についてたずねる
 例:「あなたは、1週間に何回くらい、夕食を外食しますか」
 信頼性よりも、妥当性が問題になりやすい
 意見についての質問
 回答者の意見・態度・感情などの「主観的なことがら」についてたずねる
 例:「あなたは、夕食を外食することについて、どう思いますか」
 妥当性と信頼性のどちらも問題になりやすい
 意見などは、回答者と調査者の間の質問-回答のやりとりのなかでゆらぐ可能性が高い。それに対して、事実はそうしたゆらぎが少ない。


質問文を作る際の注意点(大谷他 2005: ch4)
 大前提として、知識や関心あることがらについて質問する
 知識があるか
 「今まで何回学校に行きましたか」
 関心があるか
 「あなたは現在の中国とアルバニアの関係に満足していますか」
 いずれの質問も「わからない」という回答が続出し、分析するのに有効な回答が得られない
 倫理的に不適切な質問をしない
 直接的(無遠慮)な質問は、相手に失礼であり、怒った回答者に、回答を打ち切られてしまうかもしれない
 NG例:若い女性回答者に向かって、「恋人がいるかどうか」を質問する
 このような質問をせざるをえないときは、郵送調査法などの匿名性を保障できる実査の方法を考える
 誤解なく質問の意図が伝わるように明確に質問する
 質問の意図がうまく伝わらないと、信頼性も妥当性も低くなる
 誘導質問に気をつける
 誘導の結果、回答がある一定の方向に偏るので、信頼性は高いかもしれないが、妥当性は低い

質問の意図が伝わるように明確に質問をする
 事実を問うときの注意点(大谷他 2005: 88)
 普段の行動(ユージュアル・ステイタス(usual status)を問う質問
 例:「あなたは普段、どの程度お酒を飲みますか」(質問文例3-1)(p.88)
 特定の期間の行動(アクチュアル・ステイタス(actual status)を問う質問
 例:「あなたは昨日、お酒を飲みましたか」 (質問文例3-2)(p.88)
 意見を問うときの注意点(大谷他 2005: 86-7)
 一般的質問(インパーソナル)質問
 ある社会現象に対して対象者が抱いている意見を問う
 例:「あなたは夫婦別姓を法律で認めることについてどう思いますか」(質問文例2-1)(p.87)
 個人的質問(パーソナル)質問
 ある社会現象における当事者としての意見を問う
 例:「あなたは配偶者から夫婦別姓を求められたら同意しますか、同意しませんか」 (質問文例2-2)(p.87)
 一質問一論点の原則(ダブル・バーレル質問をしない)(大谷他 2005: 90-1)
 NG例:「あなたは若い女性が(a)たばこを吸ったり、(b)ビールを飲んだりすることをどう思いますか」(質問文例4)(p.90)
 これだと(a)は反対で、(b)に賛成の人は、どう答えていいかわからない。
 1つの質問に論点が2つ入っている。これを「ダブル・バーレル質問」と呼ぶ
 対処法:質問文を2つに分ける
 「あなたは若い女性がたばこを吸うことをどう思いますか」
 「あなたは若い女性がビールを飲むことをどう思いますか」
 難解語の排除(大谷他 2005: 93-4)
 難しい言葉は、わかってもらえない
 NG例:「あなたは、今後どのような分冊百科なら買いたいと思いますか」(質問文例6)(p.93)
 対処法:わかりやすい言葉に置き換える。注釈を付け加える
 「最後まで買い続けると1つのテーマが完結する定期的に刊行される雑誌(分冊百科)」
 単純な言葉づかいをする
 相手が理解しやすい平易で明確な言葉で質問する
 ×「概念」「コンセプト」 → ○「考え」
 表記
 「漢字」と「ひらがな」で迷ったら、「ひらがな」にする
 カタカナ英語は使わない
 二重否定を使わない
 ×「あなたは、この商品を使ってみたくないわけではありませんか」
 ○「あなたは、この商品を使ってみたいですか」
 あいまい語の排除(大谷他 2005: 94)
 あいまいな言葉は、意味の採り方で回答がかわるかもしれない。
 NG例:「普段、あなたは料理番組をどの程度視聴していますか」(質問文例8)(p.94)
 対処法:具体化して意味を限定する
 「作り方を伝授する料理番組」「話題のお店を紹介する料理番組」「料理人同士を対決させる料理番組」など
 その他のあいまい語の例
 質問:外国人が国内で不動産を購入することは許されるか
 「外国人」という言葉の理解によって、回答が変わる
 (1)国のなかで市民権を取らずに働いている人たち
 (2)休暇の期間中だけ滞在する人たち
 (3)この国へ来ることも滞在することもなく、単なる投資目的で不動産を購入しようとする人たち
 フィルター質問を用いる(メイ 2005: 154)
 (NG)「あなたは、普段から、親孝行をしていますか」 
 はい  いいえ
 「いいえ」と答えた場合に
① 「親と同居しているのに、親孝行していない」
② 「親と離れて住んでいるから、親孝行していない」
③ 「親が亡くなっているので、親孝行していない」
 という3つのうちのどれが該当するのかわからない
 妥当性の問題
 この質問で「親と子どもの関係の深さ」をあきらかにしようとしているならば、①から③は分けたほうがいい
 対処例
 ○「あなたは、親と同居していますか」
 はい  いいえ  亡くなっている
 (これが、フィルター質問)
 ○「前問で『はい』と答えた方にお聞きします。あなたは、普段から、親孝行をしていますか」
 はい  いいえ
 (これが、下位質問sub-question)

誘導質問に気をつける
 ステレオタイプ語の排除(大谷他 2005: 95-7)
 ステレオタイプの言葉は、そのイメージによって回答が誘導される
 ステレオタイプの言葉=本来の意味の他に、特別な価値的ニュアンスをもっている単語。
 NG例:「官僚が民間企業や政府の外郭団体などに天下りすることについて、どう思いますが」(質問文例10)
 「官僚」も「天下り」という言葉もマイナスイメージをもった言葉なため、否定的な方向に回答が歪んでしまう
 対処法:中立的な他の言葉に置き換える
 「官僚」→「上級国家公務員」
 「天下り」→「外郭団体などの要職に再就職する」
 黙従傾向(イエス・テンデンシー)に注意(大谷他 2005: 97-8)
 しっかりとした自分の意見をもたない人に質問すると、「はい」(イエス)と答えやすい傾向がある
 NG例
 「マス・コミの力によって世論を一定の方向に向けることができるという意見があります。あなたはこの意見に賛成ですか反対ですか」(質問文例13-1)
 「マス・コミがどうあやつっても世論を左右することは出来ないという意見があります。あなたはこの意見に賛成ですか反対ですか」 (質問文例13-2)
 上記のいずれの質問へも、49人中5人が賛成と答えた
 対処法:両論併記する
 「マス・コミと世論の関係について次のような2つの意見があります。あなたはどちらの意見により近いですか。あなたのお考えに最も近いものを1つ選んで番号に○をつけてください」
 A マス・コミの力によって世論を一定の方向に向けることができる
 B マス・コミがどうあやつっても世論を左右することはできない
 あるいは、「あなたはこの意見に賛成ですか、反対ですか」ではなく、 「・・・についてどう思いますか」に変えて、回答選択肢で賛否を問う
 必要以上に説明しすぎない(大谷他 2005: 99-100)
 論点の前に、必要以上に長い説明文をつけると、回答を無意識に誘導してしまったり、回答する気をなくさせたりする
 NG例:「日本では臓器移植が進まないために海外で心臓や肝臓の移植を受ける日本人が増えています。あなたは日本で臓器移植をもっと推進すべきだと思いますか、それともそうは思いませんか」(質問文例15)(p.100)
 対処法:不必要な説明を削除
 上記の下線部分を削除する
 威光暗示効果を避ける(大谷他 2005: 100)
 権威のある人などの見解が書かれると、この人がこういう意見ならこうしようという感じで、対象者の回答が誘導されるかもしれない
 NG例:「今年は感謝祭を1週間早めるというルーズベルト大統領の意見についてあなたはどう思いますか」(質問文例16)
 対処法:不必要な説明を削除
 上記の下線部分を削除する
 キャリーオーバー効果を避ける(大谷他 2005: 101-3)
 前の質問の内容が、次の質問の回答に影響を与えてしまうこと
 NG例:「ペルシャ湾にイラクがばらまいた機雷が1000個近く放置されているのを知っているか」「ドイツが掃海艇を派遣したのを知っているか」「日本はカネだけで人的貢献をしなかったという反日感情が高まっているのを知っているか」「日本の掃海艇派遣は、当然だ、やむを得ない、反対だ、わからない」(質問文例17-1~4)
 対処法:影響を与えそうな質問の順番を変えてやる。順番が変えられないときは、間に別の質問群を入れて、影響しそうな質問同士を離す


参考文献
 メイ, T, 2005,『社会調査の考え方──論点と方法』世界思想社.
 大谷信介他, 2005, 『社会調査へのアプローチ──論理と方法[第2版]』 ミネルヴァ書房.
 バビー, E., 2003,『社会調査法1──基礎と準備編』培風館, 3-27.



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