パットナム『孤独なボウリング』2000年──地域社会学II2011年11月16日

地域社会学IIの授業の前半は、地域社会学に関係する具体的な研究例を紹介してきました。11月16日はその最終回で、パットナム『孤独なボウリング──米国コミュニティの崩壊と再生』(2000年)を紹介しました。この研究のテーマを一言で述べるならば、「1970年代以降の約30年の間に、アメリカ人の自発的結社への参加が減少し、アメリカ全体の社会関係資本が衰退していることに警鐘を鳴らす」となるでしょう。

社会関係資本(social capital)とは、活発な社会的ネットワークが生み出す人びとの間の信頼や互酬性の規範のことで、幸せな社会生活の基盤となるものです。パットナムは、「これでもか!」というくらいデータを読者に突きつけて、その衰退を明らかにしていきます。これまで地域社会学IIで紹介してきた五つの研究例は質的調査法をもちいていましたが、今回の『孤独なボウリング』は多種多様な既存統計の2次分析にもとづいています。しかも、ここ50年あまりのアメリカ社会の変化を扱っており、「社会関係資本を切り口にしたアメリカ現代史」という趣もあります。非常に射程の広い研究で、日本語訳で689ページもある大著です。


講義ノートはこちら(MS Word, 52Kb)
https://1drv.ms/w/s!Au4k6YKQM1eZ90fnfhPVklLabh8J


==========
講義ノートテキスト版
==========

20111116地域社会学II(パットナム『孤独なボウリング』)

パットナム『孤独なボウリング』2000年

原題
 Putnam, R. D.,2000, Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community, New York: Simon & Schuster.


『孤独なボウリング』のテーマ
 1970年代以降の約30年の間に、アメリカ人の自発的結社への参加が減少し、アメリカ全体の「社会関係資本」(social capital)が衰退していることに警鐘を鳴らす
 その象徴としての「孤独なボウリング」
 アメリカでは、昔はチームでボウリングのリーグ戦をすることが多かったのに対して、現在では一人でボウリングをする人が増えている
 「中心テーマはシンプルである──20世紀が始まり前半3分の2が過ぎるまでは力強い潮流が流れており、アメリカ人のコミュニティ生活への参加はかつてないほど深まっていた。しかし、20~30年前──静かに、前触れもなく──潮流は逆転し、われわれは非常に危うい離岸流にさらされることとなった」(パットナム 2006:26)
 社会関係資本は減る一方ではなく、1960年代までは増加し、その後、減少に転じた
 そうなったのはなぜか、その影響はどういったものか、それを防ぐにはどうすればいいか
 自発的結社への参加はアメリカ民主主義の基盤
 19世紀フランスの思想家アレクシス・ド・トクヴィルは、『アメリカのデモクラシー』(1835年)で、規模の大小を問わずさまざまな自発的結社が結成されていることがアメリカ民主主義のもっとも重要な要素の一つと指摘した
 パットナムの主張
 「このような小さな部分においても──そしてもっと大きな部分においても──われわれ米国人は、互いを再び結びつけ合わなければならない。本書のシンプルな主張はこの点にある」(パットナム 2006: 28)
 そのための方法論
 「昔はよかった」というノスタルジーに陥らないためには、コミュニティ生活への参加の程度を「実際に測り数えてみること」(パットナム 2006: 24)が重要。
 多種多様な調査データ(主に量的データ)の2次分析によって、「実際に測り数えてみること」を実践する
 『孤独なボウリング』のホームページ
http://bowlingalone.com/
 パットナムが使用したデータなどが公開されている

社会関係資本(social capital)
 定義
 「社会関係資本が指し示しているのは個人間のつながり、すなわち社会的ネットワーク、およびそこから生じる互酬性、信頼性の規範である」(パットナム 2006: 14)
 資本
 新しい価値を創造できる元手
 物的資本
 建物や土地など
 人的資本(human capital)
 個々人がもつ知識や能力
 社会関係資本の「私財」と「公共財」の側面
 私財:個人が自分の社会的ネットワークを活用して仕事を得る
 公共財:地域の活発な社会的ネットワークによって、その地域の犯罪率が低下する
 一般的互酬性の規範
 特定の見返りを期待せずに何かしてあげる。なぜなら、きっと他の誰かが私のために何かをしてくれるから。
 日本のことわざ:「情けは人のためならず」
 特定的互酬性の規範:「○○してくれたから、△△してあげる」。特定の二者間のgive & take。
 「一般的互酬性によって特徴づけられた社会は、不信渦巻く社会よりも効率がよい」(パットナム 2006: 17)
 「社会的ネットワークと互酬性規範は相互利益のための協力を促進させうる」(パットナム 2006: 17)
 フォーマルな社会関係資本とインフォーマルな社会関係資本
 フォーマルな社会関係資本
 PTAのように、公式に組織化され、会報が作られ、定期的に会合をもち、定められた目的や規約をもち、全国的に組織化されているようなもの
 インフォーマルな社会関係資本
 その場かぎりのバスケットボールゲームのように、私的な楽しみのためのもの
 社会的ネットワークにおける橋渡し型と結束型
 結束型(あるいは排他型)のネットワーク
 内向き志向、排他的なアイデンティティ、等質性
 特定の互酬性を安定させ、メンバー間の連帯を促進させる
 例:民族ごとの友愛組織
 「なんとかやり過ごす」(getting by)に適する
 橋渡し型(あるいは包含型)のネットワーク
 より広いアイデンティティ、より広い互酬性
 外部資源との連携や情報伝播に優れている
 例:職探しにおける「弱いつながり」
 「積極的に前に進む」(getting ahead)に適する
 結束型か橋渡し型かは、程度の問題にすぎない
 「多くの集団は、何らかの社会的次元で結束し、そして同時に他と橋渡しを行っている」(パットナム 2006: 21)


著者のパットナムについて
 政治学者
 1941年、アメリカのニューヨーク州ロチェスターに生まれる
 1970年、イェール大学で学位を取得
 ミシガン大学教員
 1979年より、ハーバード大学。現在、公共政策講座教授
 著作
 1984年、『サミット』(イギリスの外交官ニコラス・ベインとの共著)
 1993年、『哲学する民主主義』
 『孤独なボウリング』の出発点とも言える研究
 1995年、論文「孤独なボウリング」
 論証方法などについて多くの批判を受ける
 2000年、『孤独なボウリング』
 1995年の論文への批判に応える


『孤独なボウリング』の目次
 第1部 序論
 第1章 米国における社会変化の考察
 第2部 市民参加と社会関係資本における変化
 第2章 政治参加
 第3章 市民参加
 第4章 宗教参加
 第5章 職場でのつながり
 第6章 インフォーマルな社会的つながり
 第7章 愛他主義、ボランティア、慈善活動
 第8章 互酬性、誠実性、信頼
 第9章 潮流への抵抗?――小集団、社会運動、インターネット
 第3部 なぜ?
 第10章 序論
 第11章 時間と金銭面のプレッシャー
 第12章 移動性とスプロール
 第13章 テクノロジーとマスメディア
 第14章 世代から世代へ
 第15章 市民参加を殺したものは何か? その総括
 第4部 それで?
 第16章 序論
 第17章 教育と児童福祉
 第18章 安全で生産的な近隣地域
 第19章 経済的繁栄
 第20章 健康と幸福感
 第21章 民主主義
 第22章 社会的関係資本の暗黒面
 第5部 何がなされるべきか?
 第23章 歴史からの教訓――金ぴか時代と革新主義時代
 第24章 社会関係資本主義者の課題に向けて


『孤独なボウリング』の内容紹介
構成
 第1部──導入部
 社会関係資本という概念の説明
 第2部──現状把握
 アメリカ社会における社会関係資本が、20世紀前半は上昇したものの、後半に急減したようすを、さまざまなデータを駆使して説明
 第3部──原因
 社会関係資本の減少をもたらした原因について議論
 第4部──影響
 州レベルの社会関係資本を指数化して、さまざまな領域への影響を議論
 第5部──提言
 社会関係資本の再興に向けた提言


社会関係資本衰退の現状把握(第2部)
 リーグボウリングの衰退
 図26 成人男女1000人あたりに占める米国ボウリング協議会、女性ボウリング協議会の会員数(パットナム 2006: 130)
 1960年代をピークに会員数が減っている
 「人口増加を背景に、ボウリングをする米国人はこれまでないほど増えているが、リーグボウリングは過去10~15年間に急激に落ち込んだ。1980年から1993年の間に、米国内のボウラーの総数は10%増加したが、一方でリーグボウリングは40%減少した」(パットナム 2006: 129)
 選挙活動への参加の減少
 図3 選挙活動への市民参加、1952-1996(パットナム 2006: 41)
 「政治集会に出席」「政党のために働く」がともに1960年代末をピークに減少する
 「草の根レベルでキャンペーン集会に出席したり、政党のためにボランティアで働くといったことは、過去30年を通じて政党支持以上にその頻度が低下している。1950年代から1960年代にかけ、多くの米国人が選挙キャンペーンの期間中政党のために働き、戸別訪問のドアベルを鳴らしたり封筒詰めなどを行っていた。しかし、1968年以来、その種の政治参加は突如下り坂となり、1996年の大統領選挙時には史上最低となった」(パットナム 2006: 40)
 PTA(父母と教師の会)の衰退
 図9 PTAの盛衰、1910-1997(パットナム 2006: 63)
 「18歳以下の子どもを持つ家庭100当たりの会員数」が、1960年頃をピークに減少している。
 「PTAに参加した親の、全国レベルでのパーセンテージは1945年から1960年の間に倍増以上となり、1910年の創立以来、目眩のするようなほぼ絶え間のない成長を続けていたということである。平均すると、1960年までの四半世紀間、子どもを持つ米国家庭の1.6%──40万家族以上──が毎年新たにPTA会員に加わった」(パットナム 2006: 61)
 「60年間の組織成長の逆転は──図9にグラフとして表されているが──、1960年に突然衝撃的にやってきた。引き続いて起こった低下が20年後に最終的に水平となったとき、PTA会員数は1943年のレベルにまで戻り、戦後の獲得分がすっかり消えてしまった」(パットナム 2006: 61-2)
 教会出席の減少
 図13 教会出席の傾向、1940-1999(パットナム 2006: 79)
 「成人人口に対する週当たり教会出席割合の平均」が、1950年代後半をピークに減少する
 「これらの傾向をある程度長期間の視点で見るために、五つのアーカイブの20世紀後半を通じたデータを統合して図13に示した。これらの調査による示唆は、教会出席が第二次世界大戦後の数十年間に急激に増加し、続いて1950年代終盤から1990年代終盤にかけて約3分の1ほど低下したこと、低下全体の半分以上が1960年代に起こっていたことでまとまる」(パットナム 2006: 79-80)
 労働組合の衰退
 図14 米国における労働組合所属、1900-1998(パットナム 2006: 91)
 労働組合所属者の「非農業労働力に占める割合」が、1940年代後半にピークに達し、その後30年近く高水準を維持するが、1970年代半ば以降、減少する
 「長年にわたり、労働組合は米国の勤労男性(そしてそれより少ないが、勤労女性)の間で最も普及している所属組織であり、この数十年間においても、一定の割合でそれは真実であり続けている。しかし、労働組合の所属率は40年以上にわたって低下し続けており、最も急激な低下は1975年以降に起こっている。労働組合所属がピークを迎えた1950年代中盤以降、米国労働人口における組合組織率は32.5%から14.1%へと急落した」(パットナム 2006: 91)
 専門職組織の会員率の低下
 図15 8つの専門職全国組織の平均会員率、1900-1997(パットナム 2006: 95)
 1960年にピークを迎え、その後15年あまり高水準を保つが、1970年代後半から減少する
 「世紀前半のおおよそ3分の2の間、各専門職組織に所属する医師、弁護士、建築家、会計士、歯科医師の割合は急速に、また着実に増加しており、大恐慌期の例外があるのもいつもどおりである」(パットナム 2006: 94)
 「概観すれば、専門組織の会員率は1945年から1965年の間にほぼ倍増しているが、これは前述したコミュニティ組織の場合とちょうど同じ成長率である。その後、戦後の加入ブームは突然原則、停止し、ほぼ全てのケースで逆転した」(パットナム 2006: 94)
 友人訪問の減少
 図18 社交的訪問の減少、1975-1999(パットナム 2006: 114)
 1975年以降一貫して、「前年に家で歓待」「月に2回は晩に友人を迎える」「前週に友人宅を訪問」が減少している
 1970年代の中盤から末期にかけ、DDBニーダム・ライフスタイルアーカイブによれば、家での友人の歓待は平均で年に14~15回であった。1990年代の末には、この数字は年当たり8回まで落ち込み、たった20年間に45%の低下を示した。ローパー社会・政治傾向アーカイブによる全く独立した一連の調査結果によっても、友人に会うための外出と、自分の家に彼らを招くことの双方が1970年代中盤から1990年代中盤にかけて低下したことを確認できる」(パットナム 2006: 113)
 「友人訪問は今や社会関係資本・絶滅危惧リストの掲載対象である」(パットナム 2006: 113)
 家族の団らんの衰退
 図19 家族での夕食の頻度低下、1977-1999(パットナム 2006: 116)
 1970年代後半以降、「いつも家族全員で夕食を食べる」という質問に対する既婚回答者の答えは、「あてはまらない」の割合が上昇し、「強くあてはまる」の割合が減少する。
 「既婚者のうち、「いつも家族全員で夕食を食べる」と「強く」答えるものの割合はこの20年で約50%から34%まで3分の1低下した。それと反対に、「いつも家族全員で夕食を食べる」という事柄に当てはまらないと答える、言い換えればそれが日常の慣わしでは全くないというものは、同期間に半数の上昇(16%から27%へと)示した。日常食事を共にするという家族と、日常的に別々に食事を取るという家族の比率は、1977-78年の3対1以上から、1998-99年にはその半分へと落ち込んだ」(パットナム 2006: 115)
 寄付金の減少
 図31 慈善活動の寛大性の盛衰、1929-1998(パットナム 2006: 143)
 「存命中の個人による寄付総額の国民所得に対する割合」は、1960年代前半をピークに減少する
 「20世紀の前半は、全国的に寛大さの増大した時代であった。収入の割合で見たとき、個人的な慈善は1929年から1960年までの30年間で倍近くとなった。大恐慌と第2次大戦に関係する短い断絶の後には、収入に対する寄付割合は戦後急速また着実に上昇し、1944年と1960年の間に50%近い増加を示した」(パットナム 2006: 143)
 「しかし1961年以降、収入に対する寄付割合は40年近くにわたって一貫して減少し、戦後の獲得分を完全に消し去ってしまった。存命中の個人による寄付総額を国民所得の割合として見ると、1964年の2.26%から1998年の1.61%に低下したが、これは相対的には29%の減少である」(パットナム 2006: 143-4)
 人に対する信頼の低下
 図38 信頼縮小の40年:成人とティーンエイジャー、1960-1999(パットナム 2006: 164)
 「人付き合いにおいては注意することに越したことはない」ではなく、「大半の人は信頼できる」と回答した割合は、1960年代前半以降、成人と高校生ともに減少している。特に、1980年代後半以降の高校生の低下が著しい。
 「最良の証拠が示しているのは、社会的信頼が1940年代中盤から1960年代中盤にかけて上昇し、他の多くの社会関係資本指標と同様に1964年にピークを迎えたということである」(パットナム 2006: 163)
 「しかし1960年代中盤にこの有益な傾向は逆転し、社会的信頼の長期低下が始まった」(パットナム 2006: 163)

社会関係資本が1970年代以降衰退した4つの原因(第3部)
 (1)時間と金銭面でのプレッシャー
 「……時間と金銭面でのプレッシャー……その中には共稼ぎ家族にのしかかる特別なプレッシャーを含むが,これが社会及びコミュニティへの関与減少に目に見える寄与をしている。筆者の推定では,これらの要因による低下は全体の10%にすぎない」(パットナム 2006: 346)
 図48 必要性による女性労働の増加、1978-1999(パットナム 2006: 240)
 1970年代後半以降、全女性に占める「経済的理由でフルタイム労働」の割合は増加しているが、「個人的満足のためにフルタイム労働」の割合は一定のままである。
 「過去20年間における米国女性のフルタイム雇用増加の事実上全てが、自己実現ではなく経済的プレッシャーに起因している」(パットナム 2006: 240)
 図49 フルタイム労働はコミュニティ関与を減少させる(パットナム 2006: 242)
 女性の「年当たりのクラブ会合」への出席回数を、男性全体の出席頻度と比較する。女性は、主婦・パートタイム職・フルタイム職という「仕事に関わる時間」と、満足感・必要性という「仕事への動機づけ」の2軸をクロスさせて6つのグループに分けられている。
 「女性の方が平均的男性に比べて、組織生活に対してより多くの時間を投資している」(パットナム 2006: 242)
 「関与が最も少ないのは、フルタイムで働いているが、それはそうしたいからではなく、そうせねばならないからという女性たちである。必要からフルタイムで働く女性──最も急速に成長し、現在最大の女性グループ──は、最も急激な市民的不利益を被っている」(パットナム 2006: 243)
 「最大の関与が見られるのはパートタイム労働者、特に必要からではなく選択によって働いている者たちである」(パットナム 2006: 243)
 (2)郊外化(スプロール現象)
 「郊外化,通勤とスプロール現象も,補助的役割を担っている。これらの要因全てによる影響も,問題全体のさらに10%を説明する程度だろう」(パットナム 2006: 346)
 「居住移動性は、市民参加の衰退のあらゆる責任に対して完全に潔白である」(パットナム 2006: 248)
 第50図 大都市部でのコミュニティ関与低下(パットナム 2006: 249)
 「地域グループの役員や委員を務める」「街や学校問題の公的集会に出席」について「前年で積極的だった人口割合」を、居住地の人口規模と中心都市・郊外で8グループに分けて比較する。
 「第7章で触れたように、小都市や農村地域の住民の方が他の米国人と比べるとより愛他的で、正直で、信頼する傾向にある。それどころか郊外地区においても小さい方が、社会関係資本的観点からは望ましいのである」(パットナム 2006: 249)
 「大都市の人間の参加が少ない理由は、その住んでいる場所によるのであって、住んでいる人間によるのではない」(パットナム 2006: 249)
 図52 米国の郊外化、1950-1996(パットナム 2006: 251)
 全人口に占めるそれぞれの居住地の割合は、中心都市ではほぼ横ばいだが、郊外では上昇し、非大都市では低下している。
 「大都市密集地区に住むことは、市民参加と社会関係資本を一定の度合いで弱体化させる。そのような環境下に居住する米国人がますます増加している」(パットナム 2006: 350)
 「通勤時間が一日当たり10分増加するごとに、コミュニティ問題への関与が10%失われる」(パットナム 2006: 258)
 (3)電子的娯楽(特にテレビ)
 「電子的娯楽――とりわけ,テレビ――が余暇時間を私事化したという影響は重要である。この要因は,おそらく低下全体の25%程度を説明する……」(パットナム 2006: 346)
 図61 テレビ視聴時間の増加と市民参加の減少(大卒・就労年齢の成人)(パットナム 2006: 278)
 「公的集会への出席」「議会に投書する」「地域組織の役員、委員になる」「スピーチする」について前年に積極的に参加した割合は、一日当たりのテレビ視聴時間が短いほど高くなる
 「この集団において、テレビ視聴時間が一日当たり1時間未満のものは、3時間以上のものよりも市民的積極性が1.5倍ほど強い」(パットナム 2006: 278)
 「テレビ娯楽への依存は、市民参加低下を予測する単なる有意な予測変数ということにとどまらない。それは、これまで筆者が見つけた中で唯一最も一貫した予測変数である」(強調は原文)(パットナム 2006: 280)
 図66 テレビ視聴と礼節は両立しない(パットナム 2006: 283)
 「テレビが主要な娯楽である」という意見に賛成の人ほど、「他の運転手に指を立てて侮辱」する回数が多く、「コミュニティ事業で働く」回数が少ない
 「テレビ最小主義者の回答では、年間3以上のコミュニティ事業に参加し、運転中に他の運転手を指を突き立てて威嚇するようなことはその半分以下である」(パットナム 2006: 283)
 「わが国においても外国においても、テレビの重度視聴者は(他の人口統計学的要因を統制しても)ボランティア組織への参加率と、他人への信頼度が有意に低い」(パットナム 2006: 284)
 (4)世代的な変化
 「最も重要な要因は世代的変化……長期市民世代が,関与の少ない子や孫によって取って代わられる…より公的な形態では大きく,私的なシュムージングにおいては小さい。…この要因は低下全体の半分を説明する……全体の変化の10~15%は,おそらく世代とテレビのジョイント効果に帰属する……このことを短く「テレビ世代」と呼ぼう」(パットナム 2006: 346)
 世代の名称
 長期市民世代:1910年から1940年生まれ
 ベビーブーム世代(ブーマー):1946年から1964年生まれ
 X世代:1965年から1980年生まれ
 図71 市民参加の世代傾向(教育を一定となるように統制)(パットナム 2006: 308)
 「大統領選挙で投票」「新聞を毎日読む」「大半の人は信頼できる」「コミュニティ事業で働く」「グループに所属する」「政治に関心がある」「定期的に教会に行く」「定期的にクラブに行く」の8項目について、出生年ごとに傾向を見ると、1930年頃を境に減少傾向になる。
 「この線を最高齢の世代からより若い世代へ──前世紀の変わり目に生まれたものから、「狂騒の20年代」に生まれたものへ──と見ていくと、まずわかるのは市民参加と社会関係資本のレベルが高く比較的安定しているということである。しかし、その後いささか唐突に、1930年代あたりに生まれた男女を始点として、コミュニティ関与減少の兆候に突き当たる。これらのプレ・ブーマーは、絶対的な意味ではある程度市民的であるが、その兄姉よりは多少劣っている。線をブーマーへ、そしてX世代へとたどっていくと、参加、信頼、投票、新聞購読、教会出席、ボランティア活動、政治関心において見られるこの下降傾向はほぼ中断することなく40年近くにわたって続いている」(パットナム 2006: 309)
 「この市民的世代の核となっているのは1925-30年生まれのコーホートであり、大恐慌期に小学生で、第二次世界大戦を高校で(もしくは戦場で)過ごし、初めての投票が1948年か1952年、1950年代に所帯を構え、初めてテレビを見たのが20代の後半というものである。全国調査が開始されて以後、このコーホートは例外的なまでに市民的であった」(パットナム 2006: 310)
 「さらに、この世代はその子や孫と比べて受けている公教育が大幅に少ないという事実にかかわらず、優れて市民的な役割を果たしてきた。1900年から1940年までに生まれた米国人で高校以上に進んだものは4分の1にすぎないが、対してその時期以後に生まれた米国人では半数以上である。公教育に関する限り、長期市民世代の成員は「自力でなした」市民である」(パットナム 2006: 310)
 「まとめると、社会関係資本の全国的悪化が見られたこの時期は、例外的なほど市民的な世代の数字的優越が、「ポスト市民的」コーホートの支配に取って代わられたまさにその時期にあたるということである」(パットナム 2006: 311)

社会関係資本の効果(第3部)
 社会関係資本の効果 (パットナム 2006: 352-3)
 「フリーライダー問題」の解決を容易にする
 「集合行為のジレンマ」「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」
 コミュニティ運営の潤滑油となる
 人びとが互いに信頼しているところでは、日々のビジネスや社会的取引のコストは少なくなる
 寛容で、シニカルでない、他者の不幸により共感的な性格形成を促す(パットナム,P352-P353)
 「社会関係資本指数」(パットナム 2006: 356)
 グループ所属、街や学校に関する公的集会への出席、地域組織の役員や委員としての奉仕、グラブ会合への出席、ボランティア労働とコミュニティ事業、友人との家での歓待と社交、社会的信頼、投票参加、非営利組織や市民組織の発生率という14の指標から構成される
 要約指数は、14の構成指標の標準得点の単純な平均(パットナム 2006: 608)
 図80 米国各州における社会関係資本(パットナム 2006: 358)
 州ごとに社会関係資本指数を算出し、「非常に高い」から「非常に低い」まで10段階で地図を色分けする
 「地理的に言うと、全国の社会関係資本「気圧図」は、相当に明快である。主たる「高気圧」ゾーンはミシシッピ、ミズーリ川の上流を中心として、東西にカナダ国境に沿って広がっている。一方主たる「低気圧」エリアは、ミシシッピデルタを中心とし、かつての南部連合を貫いて同心円状に広がっている。カリフォルニア州と中部大西洋湾岸諸州は、全国平均の近くに位置している」(パットナム 2006: 357)
 州を分析単位にして、社会関係資本指数と各種項目(教育、犯罪、経済、健康、民主主義、寛容性など)の相関関係を調べる(第17章から第22章)
 教育と児童福祉(第17章)
 図81 高社会関係資本州では子どもたちも恵まれている(パットナム 2006: 364)
 図82 高社会関係資本州では学校もよく機能する(パットナム 2006: 367)
 図83 高社会関係資本州では子どものテレビ視聴が短い(パットナム 2006: 370)
 犯罪
 図84 高社会関係資本州では暴力犯罪が少ない(パットナム 2006: 377)
 図85 高社会関係資本州は好戦的でない(パットナム 2006: 379)
 健康
 図86 高社会関係資本州はより健康である(パットナム 2006: 405)
 民主主義
 図89 高社会関係資本地域では脱税が少ない(パットナム 2006: 429)
 寛容性
 図91 社会関係資本と寛容性は両立する(パットナム 2006: 439)
 図92 社会関係資本と経済的平等性は両立する(パットナム 2006: 443)
 図93 社会関係資本と市民的平等性は両立する(パットナム 2006: 444)

提言──社会関係資本を増大させるために何がなされるべきか(第5部)
 2010年までに、以下の目標を達成する。
 若者と学校
 「われわれの社会の全ての部分において、その時点で成人する米国人の市民参加のレベルが,その祖父母が同じ年齢だったときのそれに匹敵し,また同時に橋渡し型社会関係資本が祖父母の時代のときよりも大きく上回ることを確保できるような方法を見いだそう」(パットナム 2006: 500)
 職場
 「米国の職場が家族へのやさしさとコミュニティとの親和性を大きく高め,米国の労働者が職場の内外で社会関係資本の蓄積を再び満たせるようになることが保証されるための方法を見いだそう」(パットナム 2006: 503)
 都会と都市デザイン
 「今日よりも通勤時間を減らして近隣とのつながりにより多くの時間が費やせるようにすること,より統合され,歩行者にやさしい地域に住めるようにすること,そしてコミュニティのデザインと公共空間の利用によって,友人や近隣とのさりげない社交が促進されるようになること,これらが確保されるように行動しよう」(パットナム 2006: 505)
 宗教
 「新たな,多元的な,社会的責任を伴う「大覚醒」を引き起こし,2010年までに米国人が,一つ以上の意義ある精神的コミュニティに今日よりもさらに深く関わるようにし,同時に他の人々の信仰と実践に対してより寛容になるようにしよう」 (パットナム 2006: 506)
 芸術と文化
 「輝く画面の前に受け身で,独りぼっちに座って過ごす余暇時間を減らし,同胞たる市民と積極的につながる時間の増加が保証されるような方法を見いだそう。市民参加を阻むのではなく,それを強化するような新しい形態の電子的エンターテイメントとコミュニケーションを育てよう」(パットナム 2006: 508)
 「さらに多くの米国人が,集団でのダンスや歌の集い,大衆劇団からラップ・フェスティバルまでの文化的活動に(単に消費したり「鑑賞」したりではなく)参加することが保証されるような方法を見いだそう。芸術を,同胞市民の多様な集団を集める手段として利用するための新しい方法を発見しよう」(パットナム 2006: 510)
 政治と政府
 「より多くの米国人がコミュニティにおける公共生活に参加する──公職に立候補し、公的集会に出席し、委員を務め、選挙運動を行い、さらには投票する──ことが確保される方法を見いだそう」(パットナム 2006: 511)



原典
 ロバート・D・パットナム, 2006, 『孤独なボウリング──米国コミュニティの崩壊と再生』(柴内康文訳)柏書房.

参考文献
 Putnam, Robert D., 1995, "Bowling Alone: American's Declining Social Capital," Journal of Democracy 6(1): 65-78.(=2004, 坂本治也・山内富美訳「ひとりでボウリングをする──アメリカにおけるソーシャル・キャピタルの減退」宮川公男・大守隆編『ソーシャル・キャピタル──現代経済社会のガバナンスの基礎』東洋経済新報社, 55-76.)
 柴内康文, 2006, 「訳者あとがき」ロバート・D・パットナム『孤独なボウリング──米国コミュニティの崩壊と再生』柏書房, 569-83.
 大野精一2010「書評ロバート・D・パットナム著、柴内康文訳『孤独なボウリング─米国コミュニティの崩壊と再生』」『教育総合研究』 3: 157-161.
 三浦一浩, 2009, 「文献案内 ソーシャル・キャピタルをめぐって[ロバート・D・パットナム『哲学する民主主義』,『孤独なボウリング』,アレクシス・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』 ほか] (まちを活かす信頼のつながり--ソーシャル・キャピタル)」『まちと暮らし研究』(地域生活研究所) 6: 47-53.
 三隅一人, 2007, 「<書評>ロバート・D・パットナム [著]/柴内,康文[訳] 『孤独なボウリング-米国コミュニティの崩壊と再生』」『理論と方法』(数理社会学会) 22(1): 121-123
 前山総一郎, 2007, 「書評 ロバート・D・パットナム著 柴内康文訳『孤独なボウリング--米国コミュニティの崩壊と再生』」『社会学研究』(東北社会学研究会) 81: 99-106.
 平成19年版『国民生活白書──つながりが築く豊かな国民生活』(http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h19/01_honpen/index.html



孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生
柏書房
ロバート・D. パットナム

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック