富山病院看護学校社会学20110629(「お互い様」精神の重要性)

映画『カッコーの巣の上で』を見てから、これまで精神障がいを題材に「社会のルールと逸脱」に関連する話をしてきました。6月29日の授業は、そのシリーズの最終回です。前半は、「逸脱は社会のルールと個人の行動がずれていること自体が問題であって、簡単には『社会のルールが問題だ』とも『個人の行動が問題だ』とも言い切れない」ということを確認し、逸脱の解決には、理念的には「個人をの行動を変えて社会のルールに合わせる方法」と「社会のルールを変えて個人の行動に合わせる方法」の二通りの解決法があることを話しました。その上で、「社会のルールを変える方法を取るには、多くの人びとの理解と協力が必要になるので、『お互い様』精神が実現の前提条件になる」ということを伝えました。

後半は、岐阜県白川郷にある合掌屋根の葺き替えについて取り上げたNHKの番組を見ました。ユイという相互扶助の仕組みによる合掌屋根の葺き替えが30年ぶりに復活したことを取り上げたドキュメンタリーです。この番組は、「お互い様」精神を考える上で、格好の素材です。6月29日の授業は番組視聴で終わってしまったので、次回7月6日は番組の内容に即して「なぜユイは困難になったのか」について考えていく予定です。


講義ノートはこちら(MS Word, 30Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/20110629%E5%AF%8C%E5%B1%B1%E7%97%85%E9%99%A2%E7%9C%8B%E8%AD%B7%EF%BC%88%E9%80%B8%E8%84%B1%E4%BA%8C%E3%81%A4%E3%81%AE%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E6%B3%95%E3%83%BB80%E5%B9%B4%E3%81%B6%E3%82%8A%E3%81%AE%E5%A4%A7%E5%B1%8B%E6%A0%B9%E3%81%B5%E3%81%8D%EF%BC%89.docx


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講義ノートテキスト版
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20110629富山病院看護

「お互い様」精神の重要性

逸脱の解消
 逸脱という規則違反は、人びとの円滑な共同活動を妨げるので、解消しなければならない
 逸脱とは、社会のルールと個人の行動がずれている状態
 ずれていることが問題であって、「社会のルールが問題だ」とも、「個人の行動が問題だ」とも、簡単には言い切れない
 したがって、逸脱は相対的なものにすぎない
 逸脱の解決とは、社会のルールと個人の行動のずれを無くすこと
 解決法1:個人を変える──医療のかかわり
 個人の行動を変えて、個人を社会のルールにあわせる
 解決法2:社会を変える──ノーマライゼーションのかかわり(例:べてるの家)
 社会のルールを変更して、社会を個人の行動にあわせる
 社会のルールを変えるのは、多くの人びとが影響をこうむるので、通常は、個人を変える「解決法1」をとることが多い
 逸脱の解決法についてのイメージ
 画用紙に木の絵を描いてもらう
 普通の人は、画用紙の大きさに合わせて、木を描ける
 普通でない人は、画用紙に対して、大きすぎたり、小さすぎたりする(=逸脱)
 逸脱とは、画用紙の大きさと木の絵の大きさが不一致である状態
 画用紙の大きさ=社会のルールのたとえ
 木の絵=個人の行動のたとえ
 二つの解決法
 木を、画用紙の大きさに合わせて、描けるようにする(上記の「解決法1」)
 医療的な解決法
 木の大きさに合わせて、画用紙の大きさを変える(上記の「解決法2」)
 ノーマリゼーション的な解決法
 画用紙に対して木が小さすぎれば、木に合わせて画用紙を切る
 画用紙に対して木が大きすぎれば、木に合わせて画用紙を2枚3枚と継ぎ足していく
 ノーマライゼーション的な解決法とは、社会のルールを精神障がい者に合わせることに等しい
 労働にかかわる社会のルールは、1日8時間労働、週40時間労働を標準としている
 しかし、精神障がい者は、こうした社会のルールに沿った働き方が困難
 1日2時間しか働けない人を4人集めて、ローテーションを組みながら1日の一人分の仕事をするというような「べてるの家」流の解決法が、ノーマライゼーション的な解決法
 ノーマライゼーション的な解決法を実現するには、社会のルールに変わってもらう必要がある
 しかし、社会のルールを変えるには、社会のルールの変更にともなって一人一人が変わる覚悟が必要
 多くの人に変わってもらうためには、逸脱の状態にあって困っている人に対して、多くの人が共感し「お互い様だ」と感じて「助け合わねばならない」と思っていることが前提条件になる
 しかし、そうした助け合い(お互い様)の精神は、「人と人の絆が失われた」と言われる現代社会で、はたして成り立つのか。


日本の農村社会における「ユイ」という相互扶助の伝統
 NHKスペシャル「80年ぶりの大屋根ふき──白川郷『結』復活の記録」(約50分、2001年5月19日放送)
 かつて、村人同士の助け合いで屋根はふき替えられていた。しかし、助け合いによるふき替えは途絶えていた。
 80年ぶりのふき替え。屋根ふきに集まった人の数、500人。村人総掛かりの屋根ふきは30年ぶり。
 白川村では、人と人との助け合いを「結」(ユイ)と呼ぶ


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