社会学総論20110715前半(「社会階層と社会移動」全国調査(SSM調査))

7月15日の社会学総論(前半)は、調査票調査の実例ということで、「社会階層と社会移動」全国調査(SSM調査)(1955年~)を紹介しました。SSM (Social Stratification and Social Mobility)調査は、1955年以来10年ごとに、全国の日本人を対象にランダム・サンプリングによる標本調査でおこなわれています。全国規模で継続的におこなわれている調査としてSSM調査は、「日本人の国民性調査」(統計数理研究所、1953年以来5年ごと)と「国民生活時間調査」(NHK放送文化研究所、1960年以来5年ごと)などと並び称されます。

調査票調査のほとんどが標本調査でおこなわれることから、授業の最初に、標本調査の基本事項(母集団、サンプル、サンプリングなど)から解説し、続いて、SSM調査の各回の内容について順番に見ていきました。


日本人の国民性調査
http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/

国民生活時間調査
http://www.nhk.or.jp/bunken/yoron/lifetime/



講義ノートはこちら(MS Word, 32Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/2011071501%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%AD%A6%E7%B7%8F%E8%AB%96%EF%BC%88%E3%80%8C%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E9%9A%8E%E5%B1%A4%E3%81%A8%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%A7%BB%E5%8B%95%E3%80%8D%E5%85%A8%E5%9B%BD%E8%AA%BF%E6%9F%BB%EF%BC%89.docx


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講義ノートテキスト版
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2011071501社会学総論(「社会階層と社会移動」全国調査)

「社会階層と社会移動」全国調査(SSM調査)(1955年~)
──調査票調査①

調査票調査と標本調査
調査票調査
 定義
 「調査票を用いて、大量の人びとに定型的な質問をし、その回答結果から、調査対象全体の傾向を、数量的に分析する調査法」
 調査票=質問紙、質問票、アンケート、質問用紙
 社会調査でもっともよく使われる方法の1つ
 公式統計の収集に利用される
 多くは「標本調査」で行われる
 「質問紙法にもとづく社会調査データベース」(SRDQ: Social Research Database on Questionnaires)
http://srdq.hus.osaka-u.ac.jp/

標本調査
 全数調査と標本調査
 全数調査(悉皆調査)
 調査対象をすべて実際に調査
 「国勢調査」など
 標本調査
 調査対象の一部をサンプルとして抽出・調査し、サンプルのみを実際に調査し、サンプルの結果から、調査対象全体を推定
 一般的な世論調査などほとんどの調査票調査は標本調査でおこなう
 母集団とサンプル(標本)
 母集団
 調査対象全体
 例:SSM調査「日本に住む20歳から69歳までの男女」(およそ1億人)
 サンプル(標本)
 母集団から抽出した、実際に調査をおこなう対象
 例:SSM調査「上記の母集団から層化二段確率比例抽出で選ばれた9739人」
 サンプリング(標本抽出)
 サンプリング
 母集団からサンプルを選び出す手続きや作業のこと
 サンプリングは、鍋のスープの味見に似ている
 「少量の標本(スプーン1杯)を取り出して母集団(鍋中のスープ全体)の様子(塩加減等)を推定(味見)する」(大谷ほか 2005: 121)
 ランダム・サンプリング(無作為抽出法)
 「母集団に含まれるすべての個体について、それが標本に選ばれる確率が等しくなるように設計されたサンプリング」(p.127)
 スープの味見の前に、よくかき混ぜないと、鍋のなかのスープの味が、偏っているかもしれない
 偏った状態で味見をすると、たまたま味の濃い部分や薄い部分をすくい取って味見をしてしまうかもしれない → 味見の失敗
 味見を成功するためには、よくかき混ぜることが重要
 よくかき混ぜる操作=ランダム・サンプリング(無作為抽出法)
 特徴
 「無作為抽出された標本分布は、理論的に正規分布をとるという特徴があり、その正規分布の構造に関する統計学的知見を応用して、抽出の際の誤差が理論的にある幅をもって確定できる」(大谷ほか 2005: 127)


SSM調査の調査企画
概要
 「社会階層と社会移動全国調査」 (Social Stratification and Social Mobility)の略称
 1955年以来、10年間隔で実施(直近の2005年は第6回目)
 SSM調査と同様に全国規模で継続的におこなわれている調査
 日本人の国民性調査(統計数理研究所、1953年以来5年ごと)
http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/
 国民生活時間調査(NHK放送文化研究所、1960年以来5年ごと)
http://www.nhk.or.jp/bunken/yoron/lifetime/

SSM調査全体を通した調査目的
 日本の社会階層はどのようになっているのか、また、階層の流動性は高いのか低いのか
 社会階層とは、社会的な資源(経済的資源・関係的資源・文化的資源)の不平等な配分にもとづく社会的な地位の異なる人びとが、複数の階層をなしてつらなる構造
 経済的資源:所得、資産
 関係的資源:人脈、威信、意思決定への参加
 文化的資源:学歴、知識

沿革
 国際社会学会連合(International Sociological Association)が1951年から開始した「社会階層と社会移動の国際比較研究計画」(Program of Cross-National Research on Social Stratification and Social Mobility)という国際共同研究事業に協力するかたちで開始される。
 当初は、継続して調査をおこなう予定はなかった。


調査設計
所属する社会階層の指標としての職業
 職業は、所属する階層の指標となる
 職業は、社会的資源(経済的資源、関係的資源、文化的資源)の保有状況を、かなりよく代表する
 職業ごとにさまざまな生活状況の傾向を見れば、社会階層の状況がわかる
 日本標準職業分類(大分類)
 A 専門的・技術的職業従事者
 B 管理的職業従事者
 C 事務従事者
 D 販売従事者
 E サービス職業従事者
 F 保安職業従事者
 G 農林漁業作業者
 H 運輸・通信従事者
 I 生産工程・労務作業者
 J 分類不能の職業
 3~4種類に区分し直す職業分類
 (1)専門技術職
 (2)管理・事務職
 (3)準ノンマニュアル職
 販売、サービス、保守
 (4)マニュアル職
 農林漁業、運輸通信、生産工程・労務作業者

サンプリング
 ランダム・サンプリング(層化二段確率比例抽出)

調査法とサンプル数・回収率
回(調査年) 種別 調査法 設計標本数 回収標本数 回収率
第1回(1955) 区部 面接 1500 1138 75.9%
市部 面接 1500 1280 82.0%
郡部 面接 1500 1309 87.3%
第2回(1965) 面接 3000 2158 71.9%
第3回(1975) 面接 4001 2724 68.1%
威信 面接 1800 1296 72.0%
第4回(1985) A 面接 2030 1239 61.0%
B 面接 2030 1234 60.8%
女性 面接 2171 1474 67.9%
第5回(1995) A 面接 4032 2653 65.8%
B 面接 4032 2704 67.1%
威信 面接 1675 1214 72.5%
第6回(2005) 面接・留置 13031 5742 44.1%
若者 郵送 4680 1187 25.4%
若者 ネット 3990 1192 29.9%
若者 ネット 3504 2081 59.4%


データの収集
調査会社に外注
 第6回調査(2005年)は中央調査社に委託
 中央調査社
http://www.crs.or.jp/
 全国主要56都市に拠点を置き、746名の登録調査員が稼働

調査方法
 第1回から第5回調査
 戸別訪問面接調査
 第6回調査
 本調査:個別面接法と留置調査法の併用
 若者調査:郵送法、インターネット

SSM調査各回の概要──時代背景・調査の問い・結果・公表
第1回調査(1955年)
 調査代表
 尾高邦雄、西平重喜
 時代背景
 日本社会が敗戦から立ち直って、高度経済成長が始まろうとしていた時期
 調査の問い:
 新憲法制定や農地改革などの戦後改革がおこなわれた。それでもなお、日本社会は身分階層的な構造を残しているのではないか。
 こうした疑問に答えるための基礎データ収集
 調査結果
 日本社会の職業階層の実態(社会経済的生活条件の職業間での差異と序列)が初めて明確に示された
 身分階層的な構造の残存については、明確な結論が下せず(比較の対象がなかったため)
 日本社会における親子間の職業の世襲は、欧米産業社会と同程度だった
 階層に関わる意識については、「資本家階級と労働者階級」「支配階級と被支配階級」といった集団間の対立意識が反映していた。
 調査結果の公表
 日本社会学会調査委員会編, 1958, 『日本社会の階層的構造』有斐閣
 尾高邦雄編, 1958, 『職業と階層』毎日新聞社

第2調査(1965年)
 調査代表
 安田三郎、西平重喜
 時代背景
 高度経済成長のまっただ中
 「第一次産業から第二次・第三次産業へ」という大量の職業移動、「農村から大都市へ」という大量の地域移動が生じた時代
 調査の問い
 親子間の職業の世襲について、純粋な社会移動と呼べるものはどの程度か
 事実移動:実際に観察された移動
 強制移動:産業構造の変化によって生じた移動
 純粋移動:=事実移動-強制移動
 調査結果
 日本社会では、強制移動の割合が大きく、社会の開放性は欧米諸国のレベルに達していない
 調査結果の公表
 安田三郎, 1971, 『社会移動の研究』東京大学出版会
 福武直・松原治郎編, 1967, 『社会調査法』有斐閣 ← SSMの調査票を収録

第3回調査(1975年)
 調査代表
 富永健一
 時代背景
 石油危機を契機に高度経済成長が終焉
 調査の問い
 日本社会を先進産業社会の一つと位置づけ、産業社会に共通の階層構造をあきらかにする
 ある職業はどの程度の威信をもっているか
 職業威信調査
 データ分析の革新
 コンピュータの利用が一般化
 SPSS、SASなどのソフトウエアを使って、多変量解析がおこなわれる
 社会移動分析へのパス解析法の導入
 調査結果
 日本社会においても,親の地位の影響より本人の学歴が地位達成に強い規定力をもつ
 職業威信調査にもとづき、約300の職業カテゴリーに職業威信スコアを定めた
 日本社会は、地位の非一貫性が特徴な社会
 「学歴は高いが、職業的地位は低い」など
 調査結果の公表
 富永健一編, 1979, 『日本の階層構造』東京大学出版会

第4回調査(1985年)
 調査代表
 直井優
 時代背景
 低成長(安定成長)期
 調査の問い
 低成長期への移行にともなう階層構造や階層意識の変化は、どのようなものか
 戦後日本社会における階層の時系列変化とは、どのようなものか
 女性における階層とは、どのようなものか
 調査結果
 常識として受け入れられてきた階層の構造や趨勢が、必ずしも普遍的な現象とは言えない。
 個人収入・世帯収入・進学機会などは、確かに全体的な水準は上がったが、平等化したり階層間格差が縮小したりしたわけではなかった
 産業化の進行とともに社会移動の開放性が高まることが予想されたが、むしろ安定していた
 階層現象の混沌とした実相が明らかになった
 調査結果の公表
 直井優ほか編, 1990, 『現代日本の階層構造』東京大学出版会(全4巻)

第5回調査(1995年)
 調査代表
 盛山和夫
 調査の問い
 より広い歴史的な視点において、日本の階層は、どのように変化したか
 日本社会の近代(モダン)社会としての成熟あるいは閉塞があるのではないか
 調査結果
 戦後復興期と高度成長時代は特異な時代であり、この時代を除けば、日本社会における基本的な社会移動の構造(機会の階層間格差)は戦前からほとんど変化していない
 階層研究の課題が浮き彫りに
 階層を構成する単位は、個人か世帯か
 同一世帯の一員であっても別の職業に従事していれば、職業階層という面から見れば、別の階層に属していることになるのだろうか。
 調査結果の公表
 盛山和夫ほか編, 2000, 『日本の階層システム』東京大学出版会(全6巻)

第6回調査(2005年)
 調査代表
 佐藤嘉倫
 時代背景
 階層の流動化と固定化という矛盾する言説の登場
 調査の問い
 流動性が高まっている日本社会において、その背景にある階層問題を抽出し、そのメカニズムを解明する
 東アジア諸国(日本・韓国・台湾)間の違いは、どのようなものか
 若年層における階層は、どのようになっているか
 調査結果
 1995年から2005年までの大きな社会変動にもかかわらず、世代間移動の相対移動は安定的である
 日本と韓国は類似した階層構造を有しているが、台湾に関しては職種の相違について考慮する必要がある
 正規雇用者は非正規雇用者の2倍以上の収入を得ている。ただし、1995年と20005年を比較すると、その格差はわずかではあるが縮小している
 2005年には平等実現のために市場課を支持するというねじれが生じている。しかも、このねじれが低階層に顕著であることがわかった。



参考文献
 原純輔, 1998, 「SSM調査の歴史と展望(調査紹介)」『日本世論調査協会報』 82: 74-86.
 原純輔編, 2000, 『日本の階層システム1──近代化と社会階層』東京大学出版会.
 佐藤嘉倫, 2008, 「2005年社会階層と社会移動調査(調査紹介)」『日本世論調査協会報』 102: 53-55.




日本の階層システム〈1〉近代化と社会階層
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