富山病院看護学校社会学20110713(日本の家族の変容)

7月13日の授業は、「家族は、地域社会に代わる助け合いの基盤になりえるか」という問題関心から、「日本の家族の変容」というテーマで話しました。最近、「国勢調査:1人暮らし、最多の3割 「夫婦と子」を逆転」(毎日新聞2011年6月29日)という報道がありましたが、家族の規模はどんどん縮小しています。助け合いの基盤を家族に期待しても、現実的に不可能という事態なのかもしれません。今回の授業は、統計数値をたんねんにたどっていくかたちを取りました。


国勢調査:1人暮らし、最多の3割 「夫婦と子」を逆転(毎日新聞2011年6月29日)
http://mainichi.jp/photo/news/20110630k0000m040116000c.html


子ども(少子化)に関する統計と図表は、下記の内閣府のページが充実しています。
「平成23年版 子ども・子育て白書(全体版<HTML形式>)」
http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2011/23webhonpen/index.html




講義ノートはこちら(MS Word, 487Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/20110713%E5%AF%8C%E5%B1%B1%E7%97%85%E9%99%A2%E7%9C%8B%E8%AD%B7%EF%BC%88%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%AE%B9%EF%BC%89.docx


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講義ノートテキスト版
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20110713富山病院看護
日本の家族の変容
授業のねらい
 精神障害者のような社会的弱者が、病院の外で普通に暮らすためには、地域社会や家族の助け合いが必要
 先週の授業でとりあげた都市化にともなう「ユイ」の崩壊のように、地域社会の助け合いは難しいかもしれない
 もう一つの助け合いの家族の助け合いはどうか?
 実は、家族という基盤も弱体化しており、家族のなかでの助け合いも難しいかもしれない
 以上のような状況を確認するために、戦後における日本の家族の歴史的変動を見ていく


日本の家族規模の縮小
 同居世代の減少
 拡大家族世帯 → 核家族世帯 → 単独世帯
 子どもの数の減少
 二人っ子化 → 晩婚化・未婚化・晩産化


家族の規模の縮小
 用語
 核家族(nuclear family):夫婦と未婚の子どもからなる家族
 夫婦のみ、男親or女親と子ども
 拡大家族(extended family):複数の核家族が組み合わさったもの
 夫婦と子どもとその夫婦の両親、など
 世帯:同居して生計を共にしている人たち
 単独世帯:一戸を構えて住んでいる単身者
 世帯規模の縮小
 1920-1955年:5人程度
 1965年:4人程度
 1990年:3人程度
 2000年:2.67人
 2005年:2.55人
 2010年速報値(調査全体の1%にあたる約50万世帯から推計):2.46人
 他の先進諸国でも、日本と同様に、世帯規模が縮小している

同居世代の減少
戦後の日本における世帯の類型ごとの趨勢
実数 割合
拡大家族世帯 一定 減少
核家族世帯 増加 増加→減少
単独世帯 増加 増加

国勢調査結果(総務庁統計局)
1920年 1955年 1965年 1975年
核家族世帯 54.0% 60.6 62.6 64.0
拡大家族世帯 39.0% 36.0 29.6 22.4
単独世帯 6.6% 3.4 7.9 13.6

1985年 1990年 1995年 2000年 2005年
62.6 61.8 58.7 58.4 57.9
19.9 18.0 15.7 14.0 12.6
17.5 20.2 25.6 27.6 29.5

 変化の原因
 核家族世帯数の増加
 兄弟の多い世代の次三男が、都会に出て、核家族を形成(特に、高度成長期)
 単独世帯数の増加
 晩婚化に一人暮らしの若者の増加、および、一人暮らし老人の増加
 その他の親族世帯(拡大家族)数は一定
 長男は、実家で、両親と同居

子どもの数の減少(少子化)
 用語
 普通出生率:人口1000人あたりの出生数
 合計特殊出生率:その年の年齢別の出生率が固定されたと仮定したとき、一人の女性が一生のうちに生む子どもの数
 人口置換水準:2.08人=人口が減少しない(再生産する)水準

図1 出生数及び合計特殊出生率の年次推移

(厚労省:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai10/kekka02.html

 グラフから読みとれること
 第1の低下:1950年から1950年代半ば──二人っ子化
 安定期:1950年代半ばから1970年代半ば
 第2の低下:1970年代半ば以降──晩婚化・未婚化・晩産化
 社会の出生力=(婚姻率)×(夫婦が産む子どもの数)
 第1の低下の原因:「夫婦が産む子どもの数」の低下
 第2の低下の原因:「婚姻率」の低下










二人っ子化の進行
 表3-1 出生コーホート別既婚女性の出生児数(落合 1997: 55)

 用語
 コーホート(cohort):世代
 読みとれること
 明治生まれの女性:4人以上産むのが多数派
 明治は1868年9月8日から1912年7月30日なので、明治生まれの女性は1947年(35歳)頃まで子どもを生んでいたと考えられる
 大正生まれの女性:変化の兆し
 大正は1912年7月30日から1926年12月25日なので、大正生まれの女性は1937年(25歳)頃から1961年(35歳)頃まで子どもを生んでいたと考えられる
 昭和生まれの女性:2人か3人しか産まないのが多数派
 昭和は1926年12月25日から1989年1月7日なので、昭和生まれの女性は1951年(25歳)頃から子どもを生んでいたと考えられる。



晩婚化
平均初婚年齢と平均年齢差の推移
西暦 1950年 1955 1960 1965 1970 1975
夫 25.9歳 26.6 27.2 27.2 26.9 27
妻 23歳 23.8 24.4 24.5 24.2 24.7
年の差 2.9歳 2.8 2.8 2.7 2.7 2.3

1980年 1985 1990 1995 2000 2005 2010
27.8歳 28.2 28.4 28.5 28.8 29.8 30.5
25.2歳 25.5 25.9 26.3 27 28 28.8
2.6歳 2.7 2.5 2.2 1.8 1.8 1.7

 初婚年齢は、1960年から1975年まで安定していたが、その後、上がり続けている。
 1970年頃の女性の結婚:クリスマスケーキ
 最近の女性の結婚:正月のモチ

未婚化
婚姻数(人口動態統計)

http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2011/23webhonpen/html/b1_s2-1-2.html

未婚者の割合(国勢調査)
  1960年 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005
男25-29 46.1% 45.7 46.5 48.3 55.1 60.4 64.4 66.9 69.3 71.4
男30-34 9.9% 11.1 11.7 14.3 21.5 28.1 32.6 37.3 42.9 47.1
男35-39 3.6% 4.2 4.7 6.1 8.5 14.2 19 22.6 25.7 30
女25-29 21.7% 19 18.1 20.9 24 30.6 40.2 48 54 59
女30-34 9.4% 9 7.2 7.7 9.1 10.4 13.9 19.7 26.6 32
女35-39 5.4% 6.8 5.8 5.3 5.5 6.6 7.5 10 13.8 18.4

近年の出生数と合計特殊出生率
 2005年の出生数と合計特殊出生率
 出生数:106万2604人と前年より4万8117人少なく、5年連続の減
 第二次ベビーブームの約半分の出生数
 合計特殊出生率:1.26(過去最低)
 2006年度の出生数と合計特殊出生率
 出生数:109万2674人と前年より3万70人増加
 合計特殊出生率:1.32(1.3168が詳細)へ上昇
 過去最低を記録した2005年度の合計特殊出生率1.26から、0.06ポイント上昇し、人口学で言う「超少子化国家(合計特殊出生率1.3未満)」を脱した。
 2007年度の出生数と合計特殊出生率
 出生数:108万人 9818人と前年より2856人減少
 合計特殊出生率:1.34へ上昇
 2008年度の出生数と合計特殊出生率
 出生数:109万人1156人と前年より1338人増加
 合計特殊出生率:1.37へ上昇
 2009年度の出生数と合計特殊出生率
 出生数:107万35人と2万1121人減少
 合計特殊出生率:1.37と横ばい
 2010年
 出生数:107万1306人で、前年のより1271人増加
 合計特殊出生率:1.39へ上昇
 ここ2年の出生率の上昇:出産年齢の高齢化(晩産化)が原因か?


晩産化
女性が第1子を生む年齢(人口動態統計)
昭50年 60 平7年 17 19 20 21 22
平均年齢 25.7歳  26.7  27.5  29.1  29.4  29.5  29.7  29.9 

出生数の年次推移、母の年齢別(厚労省「人口動態統計」)
母の年齢 出生数 対前年増減
平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 20年-19年 21年-20年 22年-21年
総数 1 089 818 1 091 156 1 070 035 1 071 306 1 338 △21 121 1 271
~14歳 39 38 67 51 △1 29 △16
15~19 15 211 15 427 14 620 13 494 216 △807 △1 126
20~24 126 180 124 691 116 808 110 956 △1 489 △7 883 △5 852
25~29 324 041 317 753 307 765 306 913 △6 288 △9 988 △852
30~34 412 611 404 771 389 793 384 382 △7 840 △14 978 △5 411
35~39 186 568 200 328 209 706 220 103 13 760 3 378 10 397
40~44 24 553 27 522 30 566 34 610 2 969 3 044 4 044
45~49 590 594 684 773 4 90 89
50歳以上 19 24 20 19 5 △4 △1

 1971年から1974年生まれの第2次ベビーブーム世代が、35歳を目の前にして、駆け込み出産をおこなったのかもしれない
 第2次ベビーブームの後の母親世代は、人口がどんどん減っていくので、それにつれて、今後、出生数も減少していくだろう


第2の少子化の原因──晩婚化・未婚化・晩産化
 経済的な困難な若い世代が結婚・出産に踏み切れない
 男性
 パートタイマーや派遣労働者などの不安定就労が増加し、妻子を養う十分な収入がなかなか得られない
 女性
 M字型就労の日本では、結婚・出産を機に仕事を辞めなければならない

http://www.gender.go.jp/data/files/z3-2.pdf
 用語
 労働力率:ある年齢層の女性を100%として、そのうち何パーセントが働いているか
 読みとれること
 M字型:就職→結婚・出産退職→育児終了後に再就職
 日本や韓国
 台形型:結婚・出産をしても継続して就労
 スウェーデン、アメリカ、ドイツ


参考文献
 厚生労働省, 2011,「平成22年人口動態統計月報年計(概数)の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai10/index.html
2011.07.13閲覧)
 内閣府, 2011, 「平成23年版子ども・子育て白書(全体版<HTML形式>)」
http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2011/23webhonpen/index.html
2011.07.19閲覧)
 落合恵美子, 1997, 『21世紀家族へ[新版]』有斐閣(有斐閣選書).







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