富山病院看護学校社会学20110608(社会のルールと逸脱)

6月8日の授業は、学生の皆さんに書いてもらった映画『カッコーの巣の上で』の感想にリプライした後、「社会のルールと逸脱」というテーマで話をしました。逸脱とは、「社会のルールに違反すること、および、そうした状態」を意味します。病気や障がいは逸脱の一種と考えられるので、社会のルールと逸脱に関する社会学の基本的な見方について解説しました。

一人で生きていくことのできない人間にとって、共同作業をすることは、いわば宿命です。その共同作業を円滑におこなうためには、人びとを調整する社会のルールが必要になります。そして、そうした社会のルールから人びとが逸脱しないように、社会は社会的コントロールという仕組みをもっています。

抽象的な話が続いたこともあって、学生の皆さんは少し眠たそうに見えました。実は、「申し訳ないなあ。でも仕方がないよなあ」と思いながら話をしてました。しかし、授業の最後に書いてもらった感想はけっこうきちんと書いていました。上で記した授業の要点は伝わっていたようなので、一安心です。


講義ノートはこちら(MS Word, 21Kb)
http://dl.dropbox.com/u/22647991/20110608%E5%AF%8C%E5%B1%B1%E7%97%85%E9%99%A2%E7%9C%8B%E8%AD%B7.docx


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講義ノートテキスト版
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20110608富山病院看護
社会のルールと逸脱

問題設定
 精神障がい
 社会のルールを意図せずに逸脱してしまうこと
 逸脱
 社会のルールに違反すること、および、そうした状態
 映画『カッコーの巣の上で』における例
 映画に出ている役者たちは精神障がいではない。しかし、映画の観客は、彼らを「精神障がい」だと認識している。それはなぜか。
 映画の前半では、ルール違反の場面が繰り返し描かれている
 トランプ「ブラックジャック」
 順番を守らない。札の得点を数え間違える
 ボードゲーム「モノポリー」
 勝手にホテルを建ててしまう
 スポーツ「バスケットボール」
 味方がいないところにパスを出す
 観客の推論
 「登場人物たちは、みんなが知っているルールを守らない」→ 「ルールの逸脱だ」 → 「しかし、わざとルールを逸脱しているわけでもなさそうだ」→「病院の中にいる」→「精神障がいの人たちに違いない」


社会におけるルールの役割
 社会のルールは共同作業を円滑におこなうためにある
 人間は、一人では生きていけない。
 生活の基本条件である衣食住でさえ、自分一人ではまかなえない
 自分たちの生活に必要なものを作り出すために、他の人と共同作業を行わなければならない。
 共同作業を円滑に行うには、そこに参加する人びとの行動を調整するルールが必要になる。なぜなら、一人一人が自分勝手な行動をしては、共同作業が成り立たないから。
 例:学校の教室におけるルール
 講師が話しているときは、静かに聞く。質問をするときは、手を挙げて質問の許可を求める。勝手に立ち歩かない。
 こうしたルールをみんなが守ることで、授業が円滑に進んでいく。
 複数の人間が共同して生活する場では必ずルールが生じ、それにそった行動が求められる
 逆に言えば、ルールに従わずにまったく「自由」に生きたいならば、一人で生きていくしかない


さまざまな社会のルール
 社会のルールには、自動的に従っていて意識もしない水準から、ルール設定の手続きも厳密に決められて意識的に従っている水準まで、いろいろなものがある。
 普段は意識しないような身近なルール
 「常識」と呼ばれるようなルール
 身体が覚えており、自動的にルールに沿った行動ができる
 例:前述の教室におけるルール
 国会議員が決める法律
 きちんとした手続きにもとづいて決められる。
 国会議員を選ぶ選挙の手続き
 国会で法律が可決される手続き
 罰則があり、警察などの強制力が発動される。


社会的コントロール
 逸脱は、社会にとって困った事態
 社会における共同作業が円滑に行えなくなり、人びとの生活が破綻する
 したがって、社会は、逸脱を未然に防いだり、生じた逸脱を元に戻したりする仕組みを備えている=「社会的コントロール」
 逸脱の種類と社会的コントロール
 意図的な逸脱=犯罪
 刑務所で罰をあたえて、ルールにそった行動ができるようにする
 非意図的な逸脱=病気や障がい
 病院で治療して、ルールにそった行動ができるようにする
 しかし、意図的か意図的でないかの区別は難しい。そのため、誤解や悲劇が起こりうる。

社会のルールを守らせるための手段
 (1)強制力(ムチ)──外からのハードな管理
 警察や軍隊などの強力な力によって、逸脱を強制的に止めさせたり、逸脱者に罰をあたえたりする。
 (2)インセンティブ(アメ)──外からのソフトな管理
 社会規範を守ると、「お金がもらえる」「ほめられる」「尊敬される」など、何か得をするような仕組みを作る。
 (3)自己規律──内からのソフトな管理
 監視者の視線を心の中に内面化し、その視線にもとづいて自己を管理させる
 パノプティコン(一望監視施設)
 映画:ラチェッドの視線
 患者たちは、ラチェッドの顔色をうかがう。マクマーフィーの提案したワールドシリーズ観戦に賛成した患者は、1回目の投票では少なかった
 ラチェッドの丁寧な言葉づかいのなかには、「自分のふるまいの善し悪しは、自分で判断しなさい」という厳しいメッセージが暗示されている
 映画:ビリーの母親の視線
 ラチェッドは、ビリーに、母親に見られていることを意識させ、自己規律を求める
 ビリーの自殺は、死刑にする代わりに、自分で自分を殺すように仕向けられたもの

社会のルールの理想的な守り方
 社会のルールの必要性を理解・納得し、自発的にルールにしたがう。
 人は一人で生きていけない → 共同作業が必要 → 共同作業には人びとの行動を調整するルールが必要(授業で話した内容)
 その共同作業にどのようなルールが必要なのかについて共同作業の参加者が話し合って決めるプロセスが、ルールの必要性を理解・納得するのに大切
 社会のルールを理想的に守ってもらうには、民主制の手続きが大事
 直接民主制
 参加者が少なくないと難しい
 間接民主制
 ルールを話し合って決める議員を選ぶ選挙
 選挙で投票することは、間接的に、ルールを決める話し合いに参加することになる
 2009年総選挙投票率69.28%


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